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村上春樹「オードリー・ヘップバーンは、本当にチャーミングでしたね」映画『ティファニーで朝食を』の歌唱シーンを回顧
村上春樹がDJをつとめるTOKYO FMのラジオ番組で、秘蔵の音源から驚きの楽曲を紹介。
オードリー・ヘップバーンの歌唱シーンやE.T.のテーマ曲についての感想を語る。
リスナーからのメール特集や内田百閒の言葉について触れる。
村上春樹, ラジオ, 音楽, 映画, メール特集
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作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。6月30日(日)の放送は「村上RADIO~歌う映画スターたち~」をオンエア。村上春樹さんが持っている秘蔵の音源の中から「えっ!? こんな人も歌っているの?」と少し驚いてしてしまうような楽曲を放送しました。
この記事では、後半1曲とクロージング曲、「今日の言葉」について語ったパートを紹介します。
最後になりますが、オードリー・ヘップバーンが映画『ティファニーで朝食を』の主題曲「ムーン・リバー」を歌います。窓辺でひとり、ギターをつま弾きながら歌うシーンですね。これは映画の中で歌われたバージョンで、サウンドトラック盤には収められていません。決してうまくはないけど、心のこもった素敵な歌唱だと思います。『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘップバーン、ほんとにチャーミングでしたね。トルーマン・カポーティの原作を僕が訳したものが、新潮文庫から出ています。原作もぜひ読んでみてくださいね。
懐かしいですね、「E.T.のテーマ」。演奏しているのはデビッド・マシューズ・オーケストラです。作曲したのはもちろんジョン・ウィリアムズ、このあいだサントリーホールで、彼が指揮してこの曲を演奏するのを生で聴いて、「やっぱりいいなあ」と感動しました。メロディーを聴いていると、目の前に明るい星空がすっと浮かんできます。E.T.ゴーホーム。
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久しぶりにリスナーのみなさんからのメールを中心とする特集を組みたいと思います。例によってメールを読む合間に、僕のセレクトした素敵な音楽もかけます。番組に関する感想、僕に対する質問、ただの世間話、猫自慢、おいしいドーナッツ話……、その他なんでもいいです。メールをいっぱいください。抽選で僕のサイン入りの本をプレゼントします。詳しくは村上RADIOの番組サイトをチェックしてみてください。
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「今日の言葉」は、映画ともE.T.ともぜんぜん関係なく、内田百閒(ひゃっけん)さんの言葉です。
「お膳の上に、小鉢に盛ったおからとシャムパンが出ている」
これは「おからでシャムパン」という短い作品、小説のようなエッセイ、エッセイのような小説の書き出し部分です。「どうしてシャンパンとおからなんだ?」と読んだ人は不思議に思いますよね。あまりにも奇妙な組み合わせだから。どうしてかというとだね……というところから、百閒先生のお話が始まります。この辺はさすがにうまいですね。
話の書き出しってとても大事なんです。逆にいえば、書き出しができちゃえばあとは簡単っていう部分もあります。短篇小説を書くとき、僕はよくそういう書き方をします。
さて、どうしてお膳の上にシャンパンとおからが載っているのか?
「お膳の前は私一人である。だれも相手はいない。猫もいない。尤(もっと)も猫がいたとしても、お膳の上がおからでは興味がないから、どこかへ行ってしまうだろう」
いいですねえ。すみませんが、続きは自分で読んでください。(ニャア)
(TOKYO FM「村上RADIO~歌う映画スターたち~」2024年6月30日(日)放送より)