尾上右近と尾上眞秀、気持ちで深くつながり共鳴する2人の「連獅子」楽しみ

AI要約

尾上右近が8回目の自主公演「研の會」を開催。今回は大阪でも初めての開催となる。

右近と尾上眞秀の共演が注目されており、2人の取材会ではほのぼのとした雰囲気が漂った。

右近の前向きなパワーと眞秀の舞台に期待が高まっている。

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

 歌舞伎俳優尾上右近が8回目の自主公演「研の會」を東京、大阪で開催する。年々開催規模が大きくなっており、大阪でも初開催となる。

 自主公演を前にした取材会も恒例で、毎回、右近が熱い気持ちをたっぷり語ってくれる。今回は「規模が大きくなればなるほど、責任が伴うことを感じます」と、期待されている自覚を語りつつ「毎回、毎回思ってますが、今回が一番気合入ってます!」と頼もしい言葉が聞けた。

 演目は「摂州合邦辻」「連獅子」の2演目。「連獅子」では、尾上菊五郎の孫で、女優寺島しのぶの長男尾上眞秀と共演する。

 中盤、右近が眞秀を呼び込み、2人での取材会となった。記者からの質問の前に、右近眞秀に質問を投げかける場面もあった。公演に向けての意気込みや、尾上眞秀襲名から1年たっての思いを聞いていた。司会者が「右近さんからの質問どうでしたか?」と聞かれた眞秀が「簡単な質問で良かったです」と笑って答え、右近も記者も笑った。普段の2人の関係性をうかがわせるような、ほのぼのとした雰囲気だった。

 右近は、眞秀について「同じ音羽屋で一緒に戦っている大切な仲間」と話している。また、これまで自分が4人の親獅子(市川團十郎、市川猿之助、尾上松也、尾上菊之助)のもとで仔獅子を演じてきた経験を振り返り「自分も仔獅子を経験した身として、親獅子をやる時は仔獅子は眞秀くんしかいないと思った」とした。

 2人の共通点についても語った。右近の父は、歌舞伎の伴奏音楽でもある清元の清元延寿太夫。眞秀の父はアートディレクター。右近は「親が歌舞伎俳優同士じゃない役者が務める『連獅子』もなかなかない」と、シンパシーとレア感を示した。

 親子、祖父と孫など、近い血縁で演じられることも多い演目。右近は「眞秀くんがあまり『連獅子』を見ないとちらっと聞いたことあがるんです。親子の物語だから、気持ちがさみしくなったり悔しくなったりすると聞いた時、僕もすごくその気持ちが分かった。その気持ちに深く共感できる役者は俺しかいないだろうと思った」と明かした。

 さみしい気持ちを前向きなパワーに転換できるのが右近らしいところで「なんとも言えない、自分にしか分からない感情は自分の武器になるし、人間が表現する役者という生業(なりわい)において、誰とも重ならない、誰とも共有できない気持ちを、逆にとらえればプラスになる」と語った。

 右近の前向きなパワー、襲名から1年たった眞秀の舞台、気持ちの部分でも深くつながり共鳴する2人の「連獅子」が楽しみだ。

 8月31日~9月1日は大阪・国立文楽劇場、9月4~5日は東京・浅草公会堂。【小林千穂】