『虎に翼』梅子が「家族を捨てた」理由と、花江が「家族を支える」理由の意外な共通点

AI要約

佐田寅子と大庭梅子の再会、家事労働に悩む猪爪花江の苦悩、そして遺産相続の複雑な展開が描かれる第13週の振り返り。

猪爪花江が家庭裁判所の人手不足と家事を抱え込む姿や、大庭家の相続争いに巻き込まれた大庭梅子の選択に迫る。

家事と仕事、男性と女性の役割分担のひずみが浮き彫りになる展開が興味深い。

『虎に翼』梅子が「家族を捨てた」理由と、花江が「家族を支える」理由の意外な共通点

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『虎に翼』振り返り日記:第13週「女房は掃きだめから拾え?」

X(旧Twitter)に日々投稿する『虎に翼』に対する感想がドラマ好きのあいだで人気のライター・福田フクスケさん(@f_fukusuke)。連載「『虎に翼』振り返り日記」では、福田さんが毎週末にその週の感想を振り返って伝える。見逃してしまった人も、あのシーンが気になると思った人も、友達と自分の感想をすり合わせる気持ちでお楽しみください。

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 家庭裁判所の特例判事補としてさらに忙しくなる佐田寅子(伊藤沙莉)の前に現れたのは、かつて女子部でともに学んだ大庭梅子(平岩紙)だった。自分を見下す夫の支配から逃れようと、三男を連れて出て行ったはずの梅子だったが、大庭家の相続争いの渦中でいまだに立場を奪われたまま。

 そんな梅子がやがてすべてを吹っ切った高笑いを見せる衝撃の展開と、猪爪家の家事労働を一人で背負い込んで疲弊する猪爪花江(森田望智)の苦悩が交差する、「家に尽くす女たち」を描いた第13週を振り返っていきたい。

 猪爪はる(石田ゆり子)が亡くなった上に、家庭裁判所の人手不足で寅子が多忙になったWパンチで、家のことはますます花江に任せっきりな状況に。

オーバーワーク気味の花江が、「お義母さんはこんな失敗一度もなかったのに」と、はるのようにうまくこなせないことを気に病んでいるのが心配だ。寅子には仕事を、猪爪直明(三山凌輝)には勉強を頑張ってほしいがために、家事労働をみずから全部背負い込もうとしているのが気になる。

 だが、「寅子が稼がなきゃみんなが困るんだからさ」と道男(和田庵)が言う通り、一家の稼ぎ手は仕事にフルベットして家計を支えねばならないし、ケア労働の担い手は家事をワンオペで負担しなければならないようにできている。猪爪家では両方をともに女性が担っていることで、図らずも戦後の性別役割分業制のひずみがよりわかりやすい形で可視化しているのが興味深い。

 一方、大庭徹男( 飯田基祐)の妾だった元山すみれ(武田梨奈)が、遺言書を根拠に遺産の全額相続を主張。その検認の場に梅子が現れたことで、彼女が結局、大庭の家から離れられていなかったことが判明する。

 梅子が三男の大庭光三郎(本田響矢)に耳打ちして遺産の遺留分を請求できることを指摘させる場面は、梅子が今も法律に明るく、新民法の内容をきちんと把握していることを示す。と同時に、光三郎を介さないと、大庭家の中での立場や発言権がないのであろうことを示す場面でもある。

 かつて、「この子だけは夫のようにしたくない」と一緒に家を出ようとした光三郎が、祖母にも梅子にも兄弟たちにも優しいまともな人間に育っていることがせめてもの救い……と思わせる場面だが、まさか週の最後であんな展開が待っているとは。