有権者「県民目線の政治を」、15年ぶりの新知事・鈴木康友さんに注文…静岡知事選

AI要約

 静岡県知事選で与野党対決を制した前浜松市長の鈴木康友氏の当選により、15年ぶりの新知事誕生が決まった。鈴木氏は市債の削減などの手腕で評価され、県政の発展に全力を尽くす意向を示した。

 立憲民主党など野党が全面支援した選挙戦で、自民党推薦の元副知事を破り、鈴木氏が勝利を収めた。川勝氏の失言との距離感に対する陣営の慎重な対応も注目された。

 県民からは新知事に対して政策の実務に重点を置くことや地域全体に目を配ること、生活に密着した政策を期待する声が上がっており、新しい県政に期待が寄せられている。

 職業差別と受け取れる発言をきっかけに4期目途中で辞職した川勝平太氏の後任を決める静岡県知事選は26日の投開票の結果、野党が推した前浜松市長の鈴木康友さん(66)が与野党対決を制した。混迷が続く中での15年ぶりの新知事誕生に、有権者からは「県民目線での政治を」との声があがっている。

 「これまでの経験や知見、人脈を全て注ぎ込んで、県政の発展に全力を尽くす」。鈴木さんは26日深夜、当選確実の報を受けて静岡市内のホテルに姿を見せ、支援者らを前に力強く語った。

 鈴木さんは昨年4月まで4期務めた浜松市長時代、1300億円以上の市債を削減した手腕などが評価され、数年前から知事候補と目されていた。松下政経塾出身で旧民主党の衆院議員も2期務めており、政界にも人脈が広い。

 選挙戦では立憲民主党が「次期衆院選の前哨戦」と位置づけ、告示日から野田佳彦元首相が浜松入りするなどして全面支援。泉健太代表や国民民主党の玉木雄一郎代表も駆けつけたほか、連合も応援に回った。川勝氏が4選を果たした3年前と同じ支援体制となった。

 陣営が悩んだのは失言があった川勝氏との距離感。鈴木さんは川勝氏と親しいものの、選挙戦ではそれを強調せず「オール静岡」を前面に出した。陣営幹部は「川勝氏の直系と見られるのは避けたかった」と語る。

 一方、自民党が推した元副知事の大村慎一さん(60)は「全ては私の不徳の致すところだ。力が及ばなかった」と述べた。陣営は幅広い支援を集めようと「オール静岡」を掲げたが、党への逆風に最後まで苦しめられた。立候補表明後、浜松を地盤にする塩谷立元文部科学相が派閥パーティー券の収入不記載問題を受けて離党。前防衛副大臣の宮沢博行氏も女性との不適切な関係で辞職し、党への不信感が広がった。

 川勝氏は多くの失言で物議を醸し、県議会が辞職勧告決議を可決するなど県政では混迷が続く。リニア中央新幹線静岡工区の行方も不透明のままとなっている。

 新知事に対する県民の期待は大きい。静岡市葵区の70歳代の無職男性は「前知事は不適切発言など、本題ではない議論ばかりだった。生活に密着した政策を進めてほしい」と注文。伊豆の国市の会社役員の男性(55)も「県民目線で県内全域に目を配り、地に足をつけて実務にしっかり取り組んで」と期待を込めた。