「定年退職後」にやってくるお金の危機“3つの波”の乗り越え方、めでたいはずの「長寿」をリスクにしないために

AI要約

1級FP技能士の黒田尚子さんは、「終活」を準備ではなく豊かな人生のために行うべきだと語っている。

老後資金に対する心構えとして、「老後資金三分法」を提案し、10年ごとに資産を分ける方法を紹介している。

最初に確保すべきは「残す」お金で、残りを「備える」お金や「使う」お金に割り当てることが重要と説いている。

「定年退職後」にやってくるお金の危機“3つの波”の乗り越え方、めでたいはずの「長寿」をリスクにしないために

1級FP技能士として、お金の面から老後の医療や生活をサポートする黒田尚子さんは、「終活」について『人生の幕引きの「準備」ではなく、人生をもっと豊かにするためにやるもの』だといいます。

そんな「終活」を悔いなく迎えるために、事前に知っておきたい「老後資金に対する心構え」を、黒田さんの著書『終活1年目の教科書 後悔のない人生を送るための新しい終活法』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

■シニアのお金事情は「この先10年」を考えること

 FPへのシニア層のご相談と言えば、老後資金に関するものが圧倒的です。

 60代後半から70代になると、多くの人が年金生活に入ります。まだ働いていて収入があっても、現役時代に比べると確実に少ない。

 定年退職時に受け取った退職金は、まだ残っているけれども、使い道が決まっていたり、いつまで長生きするかを考えたりすると、怖くて取り崩せない。

 NISAって最近よく聞くけど、投資は、興味があっても、「損をするかも」と思うと、手を出せない。

 そんな、「ないない」スパイラルに陥って、「こんな感じなんです。私の老後は、大丈夫でしょうか?」とご相談にいらっしゃるのです。

 メインの収入源が、企業年金も含めた公的年金だけというのは、これ以上、手持ちのお金が増える見込みがないということです。

 つまり退職後は、ある程度まとまった資産を持っているはずなのに、気持ち的に「プチ貧乏」に陥り、過剰に家計を締めつけてしまう人がいます。そうならず、お金にストレスフリーな人生後半を送るために、どう考えるのが正解なのでしょう。

 私がおすすめするのは、年金生活者世帯の資産を、次の3つに分けてこの先10年を考える「老後資金三分法」です。

 その中身はこんな感じ。

 ●「残す」お金

 ●「備える」お金

 ●「使う」お金

 老後資金三分法は、自分の手持ちのお金を3枚の封筒に分けると考えるとイメージしやすいかもしれません。そして、この「老後資金三分法」で最も肝心なのは、分ける順番です。

■「老後資金三分法」は分ける順番が肝心

 最初に、手持ちの資産から差し引くのは「残す」お金です。言い換えると、自分が死んでしまった後に残しておきたいお金です。これさえ確保しておけば、あとは全部使ってしまってもいいのです。