重度自閉症で話せない15歳が文学賞で入選 タブレットで文章入力

AI要約

重度自閉症の少年が書いた作文が文学賞に入選。内田博仁さんは言葉は話せないが、文字を入力する訓練を重ね文章を書く。

作文では主人公の奮闘に共感し、自身の障がいと向き合う姿を描く。北九州市のコンクールや文学賞で受賞し、作家を目指す夢を持つ。

内田さんはタブレットでの文章作成を通じ、他のコミュニケーション方法を探すヒントを提供したいと語っている。

重度自閉症で話せない15歳が文学賞で入選 タブレットで文章入力

 重度自閉症の少年が書いた作文が、北九州市で開催された二つの文学賞に入選した。書いたのは神奈川県内の特別支援学校高等部に通う内田博仁さん(15)。言葉は話せないが、タブレットや電子手帳で文字を入力する訓練を重ね、文章をつづる。

 「(主人公の)耕作が人生で何か一つでも成し遂げたいと決意した気持ちが僕は痛いほど分かるのだ。何故なら僕自身自閉症という障がいを持っていて耕作のように周りからいつも奇異な目で見られて生きてきたからである」

 昨年11月、北九州市の松本清張記念館が開いた読書感想文コンクールで「或る『小倉日記』伝」を題材にした作文では、こう綴(つづ)った。約2千字の作文で、障害のため偏見の目で見られ、それでも志を持って熱心に取り組む主人公に自身を重ねた内容だ。「深く豊かな美しい人生であったようにしか思えない。自分のこの生きざまに誇りをもって人生を歩んでいきたい」とも書いた。

 作文は最優秀賞を受賞。今年2月に表彰式があった。

 今年3月には同市が主催する「第15回子どもノンフィクション文学賞」で、第2次世界大戦で戦闘機に乗る航空兵として戦っていた大伯父について書いた作文が、次点にあたる中学生の部優秀賞に輝いた。

 選考委員のリリー・フランキーさんは「とても読ませる力のある文章で、身内のことをここまで書けるのはすごい」と講評した。

 内田さんの夢は作家だ。文章でのやりとりで答えてもらった。「僕がタブレットで文章を打つことで、僕のような発語がなく会話のできない子にも何かしらの教育方法やなにかしらの表現方法を見つけるヒントやきっかけになればと思っています」

 松本清張は朝日新聞西部本社に勤める傍ら、1952年に「或る『小倉日記』伝」を発表。翌年に芥川賞を受賞し、作家として飛躍するきっかけになった。(松本江里加)