【社説】政治資金の審議 不正の根を絶つ規正法に

AI要約

政治資金の透明化と事件再発防止のために与野党は厳格なルール作りをすべきだ。

自民党の政治資金規正法改正案に対する批判や課題が浮かび上がっている。

政治資金改革を実現するためには他党の案に歩み寄り、会期延長を視野に入れて合意形成を図るべきだ。

【社説】政治資金の審議 不正の根を絶つ規正法に

 政治資金を透明化し、事件の再発を防ぐ目的を見失ってはならない。与野党は小手先の法改正ではなく、厳格なルールを作るべきだ。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、与野党が提出した政治資金規正法改正案の審議が衆院政治改革特別委員会で始まった。

 政治資金の見直しに最も後ろ向きなのは、事件を起こした自民党の案だ。

 政治資金パーティーに関しては、パーティー券購入者の公開基準額を現状の「20万円超」から「10万円超」に引き下げる。寄付と同じ「5万円超」を主張する公明党との与党協議がまとまらず、単独で改正案を提出した。

 議論を公開基準額に矮小(わいしょう)化すべきではない。公開義務のないカネを認める限り、裏金化する可能性は残る。これでは「ザル法」と呼ばれる規正法の穴はふさげない。

 自民が10万円超にこだわるのは、名前の公開を避けたい企業・団体の購入額が減ると考えているからだろう。カネ集めありきで、透明化を後回しにしている。

 1990年代の政治改革で税金を原資とする政党交付金を導入する代わりに、政治家個人への献金は禁止された。企業・団体によるパーティー券購入は、それに代わる実質的な献金として有力な資金源となっている。

 それが不正なカネの温床となっている以上、企業・団体のパーティー券購入を禁止するのは当然である。立憲民主党が提出した法案のように、パーティーそのものの禁止に踏み込むべきだ。

 政党から政治家個人に支出され、使途が公開されない政策活動費の扱いも自民案では不十分だ。

 50万円超を受け取った議員は「選挙関係費」など、大まかな項目別の支出額を党の収支報告書に記載するだけだ。領収書の添付義務はなく、具体的な使途が国民に明らかになることはない。

 不正な支出に歯止めがかかるとはとても思えない。政策活動費の禁止や使途公開の義務化を掲げる野党との隔たりは大きい。

 罰則強化でも、会計責任者が規正法に違反した場合に政治家が連帯責任を負う「連座制」を巡り、意見が食い違っている。

 自民案に他の党が強硬姿勢で臨むのは必至だ。自民は参院の議席が過半数に満たないため、規正法改正を単独で成立させることはできない。

 岸田文雄首相は「今国会で確実に改正を実現しなければならない」と繰り返す。そうであれば自民案に拘泥することなく、他党の案に歩み寄るほかない。

 政治資金改革と呼ぶにふさわしい法改正を実現することが、国民に対する与野党の責務だ。国会の会期末まで1カ月しかない。「政治とカネ」の問題に決着をつけるため、会期延長を視野に入れて合意形成を尽くすべきだ。