数字は正しい、ただしデータは間違っている。「世界報道自由度ランキング」を批判する

AI要約

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が2024年の世界報道自由度ランキングを発表し、日本が70位でG7で最下位だったことが話題になっている。

報道自由度ランキングに疑問を持つ声もあり、数字だけに惑わされずに、その背景や作成方法を理解する必要がある。

ランキングはジャーナリストやメディアが政治的、経済的、法的、社会的な干渉なしにニュースを選択・制作・広める能力を測定している。

数字は正しい、ただしデータは間違っている。「世界報道自由度ランキング」を批判する

【これはnoteに投稿された松本健太郎さんによる記事です。】

【報道自由度で日本70位 今年、G7で最低】

※ここに貼られていた記事のURLは【関連記事】に記載しています

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)は3日、2024年の世界各国の報道自由度ランキングを発表した。対象180カ国・地域のうち、日本は昨年から2つ順位を下げて70位で、主要7カ国(G7)で最下位だった。首位は8年連続でノルウェー。

つい先日発表された「世界報道自由度ランキング」で、日本がかなり下位だったことは世論を大きく賑わせました。

ジャーナリストは「政権から報道機関に圧力がある」と言うし、メディアに批判的な方は「記者クラブ制度が悪い」と言うし、あいつが悪い、お前が悪い、みんな誰かを指さしている。何が正しいのかよく分かりません。

筆者自身の経験則で言えば、こうしたランキング自体、そもそも無批判に受け入れてはいけません。「世界人材ランキング」も「都道府県魅力度ランキング」も蓋を開けてみれば「なーんだ、下らない」と言いたくなる代物でした。気持ちは分かるぞ、山本一太。

特に数字だけが先行して走っていることが問題です。このランキングはどのようにして作られたのか、その経緯が分かれば「日本が70位なのも頷ける」「70位という判断はありえない」と私たちも評価できます。

ビジネスの現場でも「数字だけが走る」ことは何度も経験しています。インフラシステムの導入費用が年間1000万と試算されて「これで楽できるわ」と思ったのも束の間、1000万だけが先行してしまい「ちょっと高過ぎる」とちゃぶ台がひっくり返る…みたいな話はビジネスあるある探検隊です。

「世界報道自由度ランキング」の分解を通じて、「あぁ~、こんな感じで数字が走るのか」と体験いただければ幸いです。

世界報道自由度ランキング(World Press Freedom Index)は、国境なき記者団が、毎年1回発表しています。WEBサイトはこちらから。※ここに貼られていた記事のURLは【関連記事】に記載しています

なんでこんなランキング作ってるの?と思うのですが、その理由について以下の通り記載されています。ちなみに、翻訳文は筆者の手によるもので(以降も同じく)、必ずしも正確では無いかもしれません。例えば、indexはランキングと置き換えました。

The purpose of the World Press Freedom Index is to compare the level of freedom enjoyed by journalists and media in 180 countries and territories. The definition of press freedom used by RSF and its panel of experts to compile the Index is the following:

(世界報道自由ランキングの目的は、180の国と地域でジャーナリストやメディアが享受している自由のレベルを比較することにあります。 国境なき記者団とその専門家委員会が、ランキングを作成するために使用した報道の自由の定義は次のとおりです。)

“Press freedom is defined as the ability of journalists as individuals and collectives to select, produce, and disseminate news in the public interest independent of political, economic, legal, and social interference and in the absence of threats to their physical and mental safety.“

(「報道の自由とは、個人および集団としてのジャーナリストが、政治的、経済的、法的、社会的干渉から独立し、身体的および精神的安全に対する脅威がない中で、公共の利益にかなうニュースを選択し、制作し、広めることができる能力として定義されます。」)

On the basis of this definition, the press freedom questionnaire and map are broken down into five distinct categories or indicators (political context, legal framework, economic context, sociocultural context and safety).

この定義に基づき、報道の自由に関するアンケートは5つの異なるカテゴリーまたは指標 (政治的背景、法的枠組み、経済的背景、社会文化的背景、安全性)に分類されます。

後半でも触れますが、定義された「報道の自由」を、ジャーナリストやメディアが享受できているかどうかが重要なのです。

ちなみに、freedomは「自由」ですが、libertyも「自由」と訳します。自由民主党は「Liberal Democratic Party」、自由の女神は「statue of liberty」ですからね。

libertyは圧制や抑圧から逃れた状態で得た自由、勝ち取った自由のような意味合いを持つようです。例えば、厳しい校則の中で赤毛の地毛を黒色に染めない自由を英訳するならlibertyが適切なのでしょう。

freedomは肉体的精神的に規制されていない自由、人が本来持って生まれた自由のような意味合いを持つようです。例えば、若者の自由を英訳するならfreedomが適切なのでしょう。若さゆえ~(ザ・ジャガーズ)。

libertyは社会的な文脈であり、freedomは個人的な文脈だと感じました。前者は闘争的であり、後者は奔放的です。広々とした草原を前に、「ここまでは走って良い」と勝ち取ったliberty、一切の制限を無視して自分の好きなように走るfreedom。なんかそんな感じ。

国境なき記者団が「The purpose of the World Press Freedom」としたのは、あくまで対象が「個人および集団としてのジャーナリスト(人間)」だからかな、と推察します。知らんけど。