大川原化工機事件の教訓 「特殊ケース」ではない冤罪 “暴走”捜査にブレーキ不可欠

AI要約

重要経済安保情報保護・活用法が成立したことで、条文の解釈次第で冤罪が生まれる可能性があり、その防止策が求められている。

冤罪は三つのケースに大別され、それぞれ異なるメカニズムを持つ。大川原化工機事件は、犯罪とされた事実が存在するが、評価が誤っていたタイプの冤罪に該当する。

捜査の過程で正確な解釈が重要であり、解釈ミスが犯罪として認識されるリスクを低減する必要がある。

大川原化工機事件の教訓 「特殊ケース」ではない冤罪 “暴走”捜査にブレーキ不可欠

 重要秘密の定義も明らかでない「重要経済安保情報保護・活用法」が成立した今、条文の解釈次第で冤罪が生み出されるのを防ぐ仕組みが求められる。

■“暴走”捜査にブレーキ不可欠

 世の中に冤罪(えんざい)は数多い。報道されるような事件から身近に起きるトラブルまで、冤罪は尽きない。初公判直前に起訴が取り消されるなど前代未聞の経緯をたどった、化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの冤罪事件は「特殊ケース」といわれることもあるが、冤罪論の観点からみるとその捜査過程には典型的なメカニズムが存在し、決して特殊ケースなどではない。

 実は、あまり知られていないが、冤罪は三つのケースに大別される。冤罪の本質を理解する上でも、この場合分けはとても重要だ(図)。第一は、犯罪とされる事実がないにもかかわらず、架空の被害を訴えて被害者を装い、第三者を加害者にでっちあげたりするパターンだ。第三者に示談をもちかけて金品を脅し取ったりするような場合が想定できる。これは冤罪論では「犯罪事実誤認型冤罪」と呼ぶ。

 第二は、犯罪とされた事実は確かに存在するが、その事実を犯罪とは評価できないようなパターンだ。誰かにお金を借りただけなのに、お金を借りた相手から「だまされた」とか「取られた」などと文句を付けられるケースが当たる。これは「犯罪性誤認型冤罪」となる。第三は、犯罪という事実そのものは存在するが、その犯罪の真犯人と間違えられてしまうパターンだ。強盗事件が起きて目撃者が誤認したため、人違いで逮捕されてしまったようなケースである。「犯人誤認型冤罪」だ。

■「解釈」次第で「犯罪」に

 大川原化工機事件の場合は二つ目に該当する。同社が噴霧乾燥器(スプレードライヤー)を製造し、輸出をした事実はある。その上で、噴霧乾燥器が、外国為替及び外国貿易法の規制対象となる「滅菌又は殺菌することができる」装置に該当するとの「解釈」によって「犯罪」と誤認されたからである。