最後の日朝首脳会談から20年 膠着打開へ極秘ルート、小泉政権の再現なるか

AI要約

20年前の日本人拉致事件を巡る日朝首脳会談から始まり、現在も拉致被害者の即時一括帰国に向け交渉が続いている状況が紹介されている。

小泉純一郎首相の訪朝や秘密プロジェクト、岸田文雄首相の取り組みなど、過去と現在の日朝交渉についての詳細が述べられている。

今後の展望として、北朝鮮との交渉が難航する中で、3回目の日朝首脳会談の実現に向けて、水面下での交渉が続いている状況の不確定性が指摘されている。

最後の日朝首脳会談から20年 膠着打開へ極秘ルート、小泉政権の再現なるか

北朝鮮による日本人拉致事件を巡り、平成16(2004)年に小泉純一郎首相(当時)が2度目の訪朝で金正日朝鮮労働党総書記(同)と会談し、拉致被害者の家族5人を連れ戻してから5月22日で20年となる。これ以降、日朝首脳同士の接触はなく、拉致問題の進展はなかった。岸田文雄首相も全ての拉致被害者の即時一括帰国に向け金正恩総書記との直接会談の実現を北朝鮮側に水面下で働きかけているが、実現には至っていない。

小泉氏が初めて訪朝して金正日氏と日朝平壌宣言に署名し、拉致被害者5人を連れて戻ったのは14年9月17日。その後、政府は5人を永住帰国させると決定したが、北朝鮮は「一時帰国」の約束を破ったと反発し、北朝鮮にいる5人の家族やほかの拉致被害者を巡る交渉は暗礁に乗り上げた。

膠着状態を打破するため、当時の首相官邸は、少人数の極秘プロジェクトを決行。安倍晋三官房副長官の秘書官を務めた井上義行氏(現在は自民党参院議員)が密命を帯びて、15年12月と16年1月の2度、訪朝した。

井上氏は正日氏から全権を委任されたとみられる人物と協議を重ね、日朝平壌宣言の解釈や拉致被害者5人の帰国などについて詳細を詰めた。水面下での交渉の後、16年5月22日に小泉首相の2度目の訪朝が実現した。

「私直轄のハイレベルで協議を行っていく」

岸田首相は昨年5月27日の国民大集会で、金氏との直接会談の実現に向けこう表明した。超党派「拉致議連」の会長の古屋圭司元拉致問題担当相(自民党)は「政府もあらゆる手段を尽くしている。われわれも具体的には言えないが、水面下での交渉を含め、取り組みを続けている」と語る。

膠着状態を打破するため、北朝鮮側との極秘交渉ルートに活路を求めようとする姿は20年前の小泉政権と重なるが、岸田政権での取り組みが成果を上げられるかは見通せない。北朝鮮の反応も日朝首脳会談に前向きかと思いきや、一気に冷淡な態度を示すなど一筋縄ではいかないのが現状だ。

3回目の日朝首脳会談は実現に向けた水面下での交渉が続いているとみられるが、井上氏は「北朝鮮は失敗は許されない国だ。事務レベルでの詰めた議論なしに首脳同士が会うのは難しい」と産経新聞の取材に語った。(原川貴郎)