石神井公園駅前の再開発、地裁が認めた「執行停止」を一転、高裁が却下…なぜ? 住民に“回復不可能な損害”を与えかねない「深刻な問題」

AI要約

石神井公園駅南口で進むビル建設計画の再開発計画の認可をめぐる行政訴訟が東京地裁に係属している。

地裁と高裁で判断が分かれた背景には、石神井公園の景観保護や地区計画の変更に対する違法性があった。

原告側は地区計画の変更が違法であると主張しており、訴訟は継続中である。

石神井公園駅前の再開発、地裁が認めた「執行停止」を一転、高裁が却下…なぜ? 住民に“回復不可能な損害”を与えかねない「深刻な問題」

石神井公園駅南口で進む地上約100mのビル等の建設計画(再開発計画)の認可をめぐって、地権者がその取り消しを求める行政訴訟が東京地裁に係属している。

本件については、東京地裁が3月13日に地権者の申し立てに応じて建設計画の「執行停止」を命じたことが報道され、注目を集めた。しかし、5月9日になって一転、東京高裁がこれを却下する決定を下した。地裁と高裁で判断が分かれたのはなぜか。そこには、私たちの日常生活の平穏を揺るがしかねない深刻な問題があった。

本件訴訟は、2022年8月1日に、地権者が東京都に対し、石神井公園駅南口での再開発事業としてタワーマンション等の建設を行う「再開発組合」の設立について、都知事の名で行われた「設立認可処分」の取り消しを求めて提起したものである。

再開発事業計画は、一帯を更地にし、高さ約100mのタワーマンションと、35mのビルを整備するというものであり、2024年の着工をめざしている。

南口地区では、石神井公園からの眺望を守るために35mの高さ制限が導入されていた。しかし、練馬区は2020年にこれを緩和した。

原告の主張は、この高さ制限の緩和が違法であり、それを前提とした再開発組合の設立認可も違法となるというものである。

練馬区では、2011年に住民との協議の結果として景観計画が策定され、その中に、石神井公園から駅方向への眺望の中で建築物が突出しないよう、建築物の高さを抑える旨の「景観形成基準」が設けられ、そこでは最高限度が35mと設定された。

その後、再開発計画が持ち上がり、練馬区が2020年12月に、地区計画における高さ制限を原則50m、例外的な場合には制限なしとする変更を行った。本件の再開発組合の設立認可は、それを前提として行われたものである([図表1]参照)。

原告側の主張は以下のようなものである。

・そもそも地区計画を変更する必要性がない

・この地区計画の変更は景観計画に定められている景観形成基準に違反している