津波でカメラ水没もデータ復元 被災前後の能登の記録、東京で写真展

AI要約

写真家の松田咲香さんが、能登半島地震で被災し、約10年分の写真データを失ったが、復元されたことをきっかけに写真展を開催した。

被災した写真家はHDDやデジタルカメラが水没し、専門業者によって約6万枚分のデータを復元した。

写真展では地震後に撮影した能登の風景や祭りの写真を展示し、被災前の美しい姿を伝えたいと語っている。

津波でカメラ水没もデータ復元 被災前後の能登の記録、東京で写真展

 石川県珠洲市の写真家、松田咲香(さきか)さん(38)が8月下旬、東京都内で写真展を開いた。松田さんは、1月の能登半島地震で被災し、写真機材や記録媒体などが津波で水没。約10年分の写真データを失ったが、データ復旧の会社がボランティアで復元し、実現した。松田さんは「能登を通した交流ができ、次につながる出会いがあった。予想以上に能登に心を寄せてくれる人がいることを感じた」と語った。

 元日の地震では海岸近くの自宅が倒壊し、家の中も津波でぐちゃぐちゃに。約10万枚の写真データを保存していたハードディスク(HDD)やデジタル一眼レフカメラが水没するなどした。それでも何とか見つけ出したHDD5台を専門業者に持ち込み、1カ月ほどかけて約6万枚分を復元することができた。

 写真展には、地震後に撮った13点を含む49点を展示。木の浦地区の菜の花など能登の美しい景観のほか、キリコ祭りなど地元の勇壮な祭りの写真が並んだ。「菜の花やキリシマツツジも訪れた人を喜ばせようと誰かが植えて、手入れしている。能登の人の優しさや被災前の美しい姿を見てほしかった」と話す。

 地震後の写真は、知人から譲ってもらった一眼レフカメラで撮ったものだ。会場で配った写真の説明文には「ほとんど変わらない町の様子に少し疲れていた」などと自身の気持ちも記した。今回の地震で、誰でも被災者になり得ることを実感したという松田さんは「今後は、写真を通して防災や減災につながるような活動もしていきたい」と力を込めた。【阿部弘賢】