「餃子の王将」社長射殺事件が裁判員裁判の対象から除外…背景には特定危険指定暴力団・工藤会の凶暴性

AI要約

2013年12月、『餃子の王将』社長が殺害された事件において、京都地裁が裁判員裁判の対象から除外することを決定した。

工藤会系の幹部が事件実行犯として起訴されたが、工藤会の凶暴性や裁判員への脅迫行為から除外された可能性が高い。

工藤会は組織が縮小傾向にあるものの、依然として特定危険指定暴力団として指定されており、社会に影響を及ぼす可能性がある。

「餃子の王将」社長射殺事件が裁判員裁判の対象から除外…背景には特定危険指定暴力団・工藤会の凶暴性

2013年12月。『餃子の王将』を展開する『王将フードサービス』の社長だった大東隆行さん(当時72)が本社前で拳銃で撃たれ、殺害された餃子の王将事件。この事件で実行犯として殺人と銃刀法違反の罪で一昨年起訴された特定危険指定暴力団・工藤会系の幹部・田中幸雄被告(57)の裁判を巡って、京都地裁は裁判員裁判の対象から除外することを決定した。

王将事件を取材している社会部記者がいう。

「通常、殺人などの事件は裁判員裁判の対象ですが、今回、京都地裁が対象から除外することを決定したのは、これまで数々の凶悪な事件を起こしてきた工藤会への警戒があると思われます」

裁判員裁判は、国民の中から選ばれる裁判員が刑事裁判に参加する制度。その対象となる事件は、原則として以下の2種類である(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項参照)。

①死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件

②法定合議事件(死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強盗等を除く))で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件

ただし、例外として、以下の要件をいずれも満たす場合には、検察官の請求、被告人・弁護人の請求、または裁判所の職権によって、裁判員裁判の対象から除外される(法3条参照)。

(1)被告人の言動等により、裁判員やその親族等の生命・身体・財産に危害が加えられるなどのおそれがある

(2)そのために裁判員等が畏怖し裁判員の職務の遂行ができないなどの事情がある

今回、京都地裁はこの除外事由にあてはまると判断したと考えられる。

前出の記者が補足する。

「工藤会は過去には暴力団追放運動の関係者宅に手りゅう弾を投げ込むなど、一般市民に対してもその凶暴性を隠すことはありません。田中幸雄被告が留置先の福岡から京都に移送される際にも組織内からの奪還を警戒した異例の警備体制が敷かれました」

この福岡からの移送の際、田中被告は防弾仕様の特別なスポーツタイプ多目的車(SUV)に乗車。前後を8台の捜査車両が取り囲み、周囲を警戒しながらの移送は「11時間以上にも及んだ」(同前)という。

「そうした工藤会への警戒から、警察は10年前に頂上作戦を開始。会のトップである野村悟被告(看護師刺傷事件などで起訴・無期懲役判決)を逮捕し、その後も幹部組員らを逮捕。作戦が功を奏してか工藤会は資金源が絶たれ、2008年には1210人だった組員が昨年は240人と激減。組織は縮小傾向にあります」(前出・記者)

そのように組織が縮小傾向にあるなかで、今回、王将事件の裁判を京都地裁が裁判員裁判の対象から除外したのは、「工藤会の本質が今なお変わっておらず、裁判員やその親族等に脅迫や危害が加えられるおそれがあるからではないか」と前出の記者は推測する。

「これまでも工藤会がらみの裁判では裁判員が脅迫行為に遭い、対象から除外されたことがありました。王将事件で起訴されている田中被告は逮捕以来、一貫して黙秘を続けています。現在、公判前整理手続きが続いており、今のところ初公判の期日は決まっていません」

組織が縮小しながらも今なお、社会生活に危険を及ぼす恐れがあるとして『特定危険指定暴力団』に指定されている工藤会。今回の京都地裁の決定は、いたしかたないのかもしれない……。