愛知の自動車業界にはびこる"下請けいじめ" 「赤字でもやらないとつぶれてしまう」 過剰な値引き交渉に憤り

AI要約

下請け企業に対する過剰な値引き交渉の実態が明らかになっており、中小企業が厳しい立場に追い込まれていることが示されている。

下請法が下請け企業を守るために存在しているにも関わらず、発注元からの値下げ交渉が横行しており、多くの企業が赤字に陥っている現状が示されている。

さらに、コロナ禍などの理由で増産がなくなった際に補償がないといったケースも報告されており、下請け企業が一方的なリスクを負わされている状況が浮き彫りになっている。

愛知の自動車業界にはびこる

下請け企業の弱い立場につけこむ過剰な値引き交渉が存在しています。今回は、厳しい"下請けいじめ"の実態を取材しました。

愛知県内で金属加工を手掛ける中小企業の社長のAさん。主に自動車部品を扱う、いわゆる下請け企業で、発注元からの「値下げ交渉」に憤りをあらわにします。

(愛知の下請け企業・A社長)

「言われたコストでやったら、赤字とはっきり分かっている。赤字でもやらないと、つぶれてしまう弱みを持っている。(値下げ要求が)2割なら、かわいいもの。半分とか3分の1は、結構多い」

下請け企業を守る「下請法」は、発注元が取引価格を通常支払われる対価に比べ"著しく"低く設定することを「買いたたき」として禁じています。

Aさんの会社が直面した実際の「値下げ交渉」のやりとりを見せてもらいました。新たな部品の発注に、Aさん側の見積りは36万円を提示。しかし、発注元の要求は「20万円以下でできないか」という内容。約45%の値下げを要求されました。

Aさんは「赤字になってしまう」と、この取引を断りましたが、受けざるを得ない場合もあるといいます。

(愛知の下請け企業・A社長)

「中小零細の厳しいところで、とにかく仕事を取らないと従業員の給料を払えない」

下請け企業の弱い立場に付け込んだ「買いたたき」について、元公正取引委員会の専門家に聞きました。

(同志社大学大学院司法研究科・小林渉特別客員教授)

「デフレでなかなか価格が引き上げられなかったいろいろな企業が、利益を上げるために、生産性の向上や付加価値の向上による利益増ではなく、コスト削減によって利益を確保していくという思考がある」

中小企業の弱い立場に付け込んだ、不当な要求はほかにも。愛知県常滑市の「山本プレス工業」で起こったケースです。

山本プレス工業は、主に自動車向けの部品を手がける町工場。数年前、発注元から増産の話があり、新工場を造りました。しかし、コロナ禍などの理由で仕事は増えず。発注元からは、何の補償もないといいます。

(山本プレス工業・山本正好社長)

「第2工場は『増産する』と取引先に言われて増設した。"出す出す詐欺"という言葉が、僕らの間では、はやっている。(増産がなくて)みんな泣いている」

(同志社大学大学院司法研究科・小林渉特別客員教授)

「事情変更のリスクを、一方的に下請けが負うような話。増産発注を何月からどのくらい予定していると言われて投資したのに、一方的にキャンセルするというのは、下請法上の問題があると思う」