兵庫県知事の「不正」を公益通報して停職処分に リスクが大きすぎる制度の欠陥 粟野仁雄

AI要約

兵庫県知事が告発される事態に発展した経緯。最初には犯人探しの展開があった。

知事への告発文に含まれていた主張やその結果についての詳細。

告発者が突然亡くなるという展開や、真相究明のための特別委員会の設置について。

兵庫県知事の「不正」を公益通報して停職処分に リスクが大きすぎる制度の欠陥 粟野仁雄

「不正」を告発された兵庫県の斎藤元彦知事だが、最初にやったのは「犯人探し」だったという。

◇「告発文は誹謗中傷を含む」と停職3カ月

「斎藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」──。

 3月12日、報道機関や県議会関係者などに届いたという文書の題名だ。名指しされた斎藤知事は同27日の記者会見で、西播磨県民局長が「県民局長としてふさわしくない行為をしたということ、そして本人もそのことを認めていること」を理由に挙げ、同日付で解任したと説明した。

 その行為とは、「事実無根の内容が多々含まれている内容の文書を、職務中に職場のパソコンを使って作成した可能性があること」。冒頭に挙げた告発文のことだ。斎藤知事は「業務時間中にうそ八百含めて、文書を作って流す行為は公務員としては失格」とも述べた。当時の西播磨県民局長は渡瀬康英氏だった。

 告発文の記述のうち、知事が違法行為に関与したとする主張は、県内の商工会議所などに出向いて次回知事選で自身に投票するよう依頼した▽複数の企業に高級コーヒーメーカーなどの商品をねだって受け取った▽県職員に怒鳴るなどのパワーハラスメントを繰り返した──などだ。このほか、部下に命じて違法行為をさせたとも主張している。

 渡瀬氏は4月4日、県の公益通報窓口に通報したと公表した。同16日には、『神戸新聞』(電子版)が「文書で斎藤知事に贈られたと指摘されていた高級コーヒーメーカーを県幹部が受け取っていたことが分かった」と報道。一方、県は5月7日、渡瀬氏の告発内容の「核心部分が事実でない」とする調査結果を公表し、告発文は誹謗(ひぼう)中傷を含むとして渡瀬氏を停職3カ月の懲戒処分とした。

 真相究明を求めた県議会は6月13日、「文書問題調査特別委員会」の設置案を賛成多数で可決した。地方自治法100条に基づくことから、「百条委員会」ともいう。

◇「死をもって抗議」

 渡瀬氏は7月19日の百条委に証人として出席し、証言する予定だったが、同7日に兵庫県姫路市の実家で亡くなっているのが見つかった。遺族が県議会事務局に送ったメールに「死をもって抗議する。百条委は最後までやり通してほしい」と渡瀬氏が書き残した文言があったという。