今こそ公選法のアップデートを!ポスターサイズ規定廃止や選挙公報義務化を盛り込んだ提言の狙いを未来政経研究所にインタビュー

AI要約

選挙に関する公職選挙法改正の必要性を提言する未来政経研究所の取り組みについて、ポスターや政見放送に関する具体策がまとめられている。

ポスター掲示スペースの販売・譲渡禁止やポスターサイズの緩和、選挙公営制度の改革が必要性が強調されており、選挙妨害や候補者の不当な利用を防ぐため具体的な提案がされている。

選挙管理委員会による一括掲示などの新たな仕組みも提案され、選挙活動の公正性や公平性を高めるための改革が模索されている。

今こそ公選法のアップデートを!ポスターサイズ規定廃止や選挙公報義務化を盛り込んだ提言の狙いを未来政経研究所にインタビュー

今年に入り、選挙妨害やポスター、政見放送など問題が露出したことから、選挙について規定する「公職選挙法」(以下、公選法)の改正の必要性が話題に上っています。各政党も今秋の臨時国会を見据えて議論のテーブルについているところです。こうした動きに先駆けて、未来政経研究所が2024年9月6日、「選挙公営制度に関する提言」をまとめました。同提言では、ポスター掲示スペースの販売・譲渡の禁止やポスターサイズ規定の緩和、政見放送の方法の見直しなどを盛り込んでおり、対処療法にとどまらない根本的な問題解決につなげるための具体策を提案しています。

選挙ドットコム編集部は、同研究所理事長で提言作成に携わった島田光喜氏にお話を伺いました。

選挙ドットコム編集部(以下、編集部):

提言をまとめるに至った経緯は?

島田光喜氏(以下、島田氏):

今年4月の東京15区の衆院補選で起こった「選挙妨害」、そして7月の都知事選では選挙の当選を目的としない売名目的の候補者が乱立してポスター枠の「販売」や過激な政見放送などが問題になりました。これらは日本の選挙制度・民主主義の歴史からみても大きな「汚点」と言えるもので、公選法を見直す必要性を強く感じました。

そこで、研究所内に「選挙公営改革プロジェクトチーム」を立ち上げ、研究所顧問でもあり選挙制度を研究している早稲田大学の日野愛郎教授、選挙プランナーの松田馨氏らを中心に提言をまとめました。

編集部:

今回の提言では、6項目挙げていますが、最初の1項目は「ポスター掲示場に関する改正」ですね。

(1) はまさに、7月の都知事選でNHKから国民を守る党が行って波紋を広げたケースを念頭に置いていると受け取られます。

島田氏:

ポスター掲示場は公職選挙法第143条に定められている通り、当選することを目的に選挙公営制度のもと公費により補助されたスペースです。公費により補助されたスペースを販売することや他者に譲渡することを禁止すべきだと考えています。悪用を防ぐという趣旨です。

編集部:

一方、(2)と(3) ではポスターの事前審査、電子提出とサイズ規定の廃止を求めていますね。これにはどのような狙いがありますか?

島田氏:

候補者の思想・信条の自由を尊重すべきことは言うまでもありませんが、公序良俗に反するポスターは事前に掲示を拒否できることが望ましいと考えています。現状の公選法には、政見放送と選挙公報にある「不法利用罪」と同様にポスターにも罰則規定を設けるべきです。

併せて、ポスターの掲示は選挙管理委員会が一括で貼り出すことを提案しています。現状では立候補者自身が行っているために組織力、資金力の差によってポスターを貼る数やスピードは大きく異なるのが実情だからです。一括掲示によって候補者の公開性、公平性を担保することにつなげるべきと考えます。

もう一つの電子提出・サイズ規定廃止は、都知事選でのポスター枠不足を受けて提案しています。公選法では、ポスターサイズを縦・横それぞれコンマ1桁まで厳格に決めていますが、電子化すれば拡大・縮小ができ、立候補者数に応じた柔軟な対応が可能になります。

実際に、オランダでは選挙管理委員会に該当する公的な機関が一括して掲示板サイズの大きなポスターに印字し、公営掲示板に貼っています。オランダでもデジタルサイネージと併用するなど、掲示場所に応じた柔軟な対応をしています。日本でも公的機関による一括掲示を検討してもよい時期ではないでしょうか。