台風10号の突風で倉庫やハウスが損壊 周囲には「離農」の声も

AI要約

宮崎県で台風10号による突風被害が生産者に影響を与え、農業や水産業の被害が相次いだ。復旧に向けた取り組みが始まっているが、被害の全容把握には時間がかかる見込み。

突風で倒壊したハウスや倉庫などの被害が報告され、キュウリ生産などの作付けに影響が出ている。生産者の中には農業を続けることを諦める人もいる状況。

知事も被災地を訪れ、営農支援の必要性を訴える。被害を受けた生産者に対し、個別の支援策を検討する必要があるとの声が挙がっている。

台風10号の突風で倉庫やハウスが損壊 周囲には「離農」の声も

 台風10号に伴う突風が発生した宮崎県の地域では、農業や水産業でもハウスの倒壊といった被害が相次いだ。発生から間もなく1週間。復旧に動き出した生産者もいるが、見通しが立たない生産者もいる。第1次産業の被害の全容把握には「もう少し時間がかかる」(県担当者)という。(奥正光)

 「あと10メートル違えば、自分も(突風で)飛ばされていたかもしれない」。宮崎市佐土原町下田島でキュウリ生産会社を経営する西岡征志郎さん(42)は、「あの日」をこう振り返った。

 8月29日午前0時ごろ、母親が住む近くの実家へ駆けつけ、車から降りた瞬間、轟音(ごうおん)と地響きを体で感じた。

 気になって近くの会社の様子を見に行くと、「何か、鉄のかたまり」が敷地に入ってきているのに気づいた。暗くてよく見えなかったが、夜が明けて確認すると、隣の敷地から倒れ込んできたハウスだった。

 近くにあった同社の農業用倉庫は、上から押しつぶされたように全壊。10月1日にキュウリの定植予定だったハウス3棟も損壊した。「愕然(がくぜん)、という言葉しか見つからなかった」

 自身は何とか復旧させて、今年の作付けに間に合わせたいと思っているが、同じ生産者からは農業を続けることをあきらめるという声が上がっているという。「離農するという方の心境を考えると……」。その先の言葉が続かなくなった。

 西岡さんの被害を9月3日に現地視察した河野俊嗣知事は「改めて竜巻の猛威を実感し胸が痛む思い。営農を後押しできるような対策を考えていきたい」。西岡さんは「農家の個別の実情に合わせた支援が必要なのでは」と話していた。(奥正光)