疲労回復のプロが教える「7つのストレッチ」、寝てすぐ“勝負の3時間”を深い眠りに【実践写真付き】
疲労の原因は活性酸素の過剰な発生であり、脳が疲労因子を感知してアラームを発している。
疲労回復には睡眠が重要であり、疲労因子が発生しない睡眠中に疲労回復因子が産生されるメカニズムがある。
睡眠の最初の3時間は熟睡することがポイントであり、成長ホルモンが分泌されて細胞を修復し疲労を回復させる。
最近疲れが取れないと感じたら、「睡眠の質が下がっている」という脳からのアラームかもしれない。なぜ疲労を翌日に持ち越してしまうのか。疲労回復のポイントと深い眠りをいざなうストレッチを、専門家が指南する。(取材・文/フリーライター 増澤曜子)
● 活性酸素が増えすぎると 疲労因子が発生する
「疲労は、脳が私たちに発するアラームです」
こう語るのは、疲労回復専用ジムのプログラムディレクター松尾伊津香さん。松尾さんは大学で心理学・精神医学を学び、卒業後にヨガインストラクターとして活動を始めた。多くの人々の心身の健康に向き合ってきた経験をもとに、疲労回復の指導やセミナーを行っている。
「飽食の時代である現代では、昔のように食料欠乏によるエネルギー不足が原因となる疲労は、ほとんどありません。現代の疲労の原因の一つとして、活性酸素の過剰な発生が考えられます」
活性酸素とは、体内に取り込まれた酸素の一部が通常よりも活性化された状態になったもので、日常的に発生している。免疫や細胞間のシグナル伝達、排卵、受精などさまざまな機能に利用されているが、しかし過剰になると細胞に傷害をもたらす。
「活性酸素によって細胞が傷つけられると、疲労因子(FF)が発生します。この疲労因子を脳がキャッチすると『疲れた』と感じるのです。いわゆる全身倦怠感です。これは、脳が私たちに休養するようにと発するアラームでもあります」
● 寝ている間に疲れが回復する メカニズムとは?
疲労を回復するためには二つの方法がある。一つは、オーバーワークを避けること。過度な運動やストレスは、活性酸素の産生を増やしてしまうからだ。
「もう一つは、疲労因子を除去する疲労回復因子(FR)の産生をうながすことです。体内に疲労因子が発生すると、これによる損傷を修復する疲労回復因子も発生します。疲労因子の発生に回復因子の発生が追いつかないと、疲労が残ってしまうのです」
起きている間には疲労が取れなくても、睡眠中は疲労因子が発生せず疲労回復因子の産生が追いつくので、朝起きた時には疲れが取れている、というのが疲労回復のメカニズムだ。
「また、睡眠中には疲労回復に重要な役割を果たすメラトニンが分泌されます。メラトニンは睡眠中に分泌されるホルモンで睡眠を誘発する働きがありますが、活性酸素を無害化する強い抗酸化力も持っています」
たまり続ける疲労を取るためには、疲労回復因子のリカバリー力が優位になり、抗酸化力が高まる睡眠が重要となる。しかし、ただ眠ればいいというわけではない。疲労回復には、睡眠の最初の3時間を熟睡することがポイントだ。
「睡眠中は、ノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)が交互に現れます。入眠後3時間に現れるノンレム睡眠は特に深く、脳が休むとともに、成長ホルモンが大量に分泌されます。成長ホルモンは細胞を修復し疲労を回復させる大切なホルモンです」
疲労回復に重要な「最初の3時間」で深く眠るためにはどうしたらいいのだろう。