突然姿を消した派閥事務局長、それが全ての始まりだった 二階元幹事長の不出馬表明の真相【裏金政治の舞台裏⑤】

AI要約

永井等氏が突然姿を消し、自民党二階派裏金事件の序章となった経緯について

永井の離脱後、特捜部の巧妙な捜査により真相が明らかになりつつあったが、二階派幹部は状況を甘く見ていた

特捜部による二階派事務所の家宅捜索や永井の在宅起訴を経て、二階派の裏金問題が表面化した

突然姿を消した派閥事務局長、それが全ての始まりだった 二階元幹事長の不出馬表明の真相【裏金政治の舞台裏⑤】

 昨年夏、一人の男が東京・永田町から突然、姿を消した。男の名は永井等。四半世紀近くにわたって自民党二階派(志帥会)の事務局長を務め、多くの永田町関係者から慕われた知る人ぞ知る人物だった。その永井の雲隠れが、今年1月の二階派解散決定から3月の自民党元幹事長、二階俊博の衆院選不出馬表明に至る二階派裏金事件の序章だったとは、この時点では誰も予想していなかった。(共同通信裏金問題取材班、敬称略)

 ▽二階派事務局長の突然の離脱

 2023年初夏、東京・平河町に所在する砂防会館別館3階の二階派事務所を訪ねると、事務局員の1人から告げられた。「永井事務局長は体調を崩し、しばらくお休みすることになる」

 東京地検特捜部はその年の6月以降、二階派や安倍派など5派閥がパーティー収入を過少に記載したとする政治資金規正法違反の疑いで刑事告発を受け、永井らに任意で事情聴取を続けていた。永井はその過程で体調を崩し、自宅療養を余儀なくされていた。

 永井の離脱をよそに、二階派幹部は特捜部の狙いを甘く見ていた。ある幹部の一人は「政治資金収支報告書の訂正で済むとの話もある」と楽観論を披露していた。

 狙いを悟らせない特捜部の捜査は巧妙だったとも言える。事情聴取を担当した検事は明るく振る舞い、派閥事務局員らの警戒心を解きつつ、派閥の会計資料を収集し、全容把握を進めた。療養中の永井も事情聴取のため、たびたび地検に呼ばれた。永井はその秋、静かに派閥事務局長を退職した。特捜部の真の狙いが見えぬまま、時間ばかりが経過していった。

 状況が変わったのは、年の瀬が近づいてからだった。特捜部は12月13日に臨時国会が閉幕すると、翌週19日に党最大派閥安倍派(清和政策研究会)の事務所と同時に、二階派事務所の家宅捜索に踏み切った。

 永井は初めて事情聴取を受けてから約7カ月後の2024年1月19日、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で在宅起訴された。

 ▽二階派が続けた裏金づくりのからくり