出生率は先進国1位、食料自給率は90%超、待機児童はゼロ…日本が真っ先に見習うべき中東の国の名前

AI要約

イスラエルは国土の60%が荒野で、隣国との緊張関係がある国だが、国民のチャレンジ精神が旺盛でさまざまな課題を解決している。

培養肉技術をリードするイスラエルでは世界初の産業用培養肉生産施設が開設され、培養肉の生産が進んでいる。

イスラエルは食の安全保障に強い意識を持ち、培養肉への投資が積極的に行われている。肉の消費量が多い国で、戦時に肉不足が国家戦略的な課題となっている。

イスラエルとはどんな国か。元外交官で在イスラエル日本国大使館勤務経験のある中川浩一さんは「国土の60%は荒野で、隣国との緊張関係もある国だ。だが、それゆえに国民のチェレンジ精神が旺盛で、さまざまな課題を解決している」という――。

 ※本稿は、中川浩一『中東危機がわかれば世界がわかる』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

■世界初の培養肉を使ったハンバーガー店がオープン

 2022年3月、東京大学で、最新の技術で作った国産「培養肉」の初めての試食が行われました。

 肉の細胞を培養して新たな肉を作り出す「培養肉」は、食料不足の解消や環境負荷の軽減などにつながるとされ、世界中で研究・開発競争が激化しています。

 この培養肉、国内では、大学や企業の研究グループが、ステーキのようにおいしく食べ応えのある、「培養肉」の実現を目指して研究を進めてきたもの。

 それに先んじて、イスラエルの食品技術企業が、その培養肉の世界初の産業用培養肉生産施設を2021年6月、テルアビブに近い都市レホヴォトに開設。1日にハンバーガー5000個分に相当する500キログラムの培養肉を生産できる能力を備えているといいます。

 すでに鶏肉、豚肉、ラム肉は生産可能な状態で、牛肉もまもなく生産できるようになるそうです。

 動物を飼育・繁殖させることなく、また遺伝子組み換え作物を使うこともなく、動物細胞から肉を直接生産する。これは従来の畜産の約20倍という高速の生産サイクルだとか。

 2020年、世界で初めて培養肉を使ったハンバーガーショップがオープンしたイスラエルは「培養肉先進国」としても有名で、これを支援しているのが「国家」。

■「食の安全保障」への強い意識

 イスラエル経済産業省傘下のイスラエル・イノベーション庁は、培養肉企業で構成される培養肉コンソーシアムに1800万米ドルの助成金を提供しました。

 この助成金の額は日本の約3倍。イスラエルが培養肉に力を入れているのは、有事に備えた「食の安全保障」が目的で、食料安保にかける予算と必死さが違います。

 ちなみに、それほどまでに培養肉に入れ込むのは、イスラエルにはそれだけ肉好きが多いということ。米国やアルゼンチンに次ぐほど1人当たりの肉の消費量が多く、鶏肉の1人当たりの消費量に至っては世界一です。

 イスラエルでは、若い男女が徴兵に行くのは当たり前の光景ですが、もし戦争になったら、肉不足では前線の兵士や国民の士気を高めておくことができない、という国家戦略が根底にあるのです。

 本当に国民を守るためには何が必要なのか。

 有事など、万一のときの安全保障の本質を、イスラエルは教えています。