陸・海「統合運用」の整備進める佐世保基地 加速する防衛力の「南西シフト」【現場から、】

AI要約

佐世保での防衛力強化に向けた取り組みが進行中。海上・陸上自衛隊の岸壁不足や装備の運用上の課題が浮上している。

水陸両用車の運用における岸壁不足の問題や、崎辺地区に建設される大型岸壁の重要性が示されている。

自衛隊の取り組みにより、陸海自衛隊統合運用の拠点が誕生する見通し。佐世保の軍港は新たな展開を迎えようとしている。

陸・海「統合運用」の整備進める佐世保基地 加速する防衛力の「南西シフト」【現場から、】

シリーズ「現場から、」。今週は防衛力の“南西シフト”が進む中、地元で何が起きているのかお伝えしています。長崎県の佐世保では、陸・海の統合運用施設の整備が進められています。その取材から見えてきたものとは。

基地の町、長崎県佐世保市。その佐世保で、岸壁をめぐる課題が浮上しています。

海上自衛隊 立神岸壁。護衛艦が何隻も横並びに係留されています。

自衛官はこの状況を「メザシ」と呼んでいます。岸壁不足から起きる現象です。

自衛隊OBは、設備面の遅れを指摘します。

元海自佐世保地方総監 香田洋二さん

「保有する艦艇の数に比べて係留施設というのについて言いますと、極端に不足している」

岸壁の問題は陸上自衛隊でも。

水陸両用車「AAV7」。佐世保の「陸上自衛隊水陸機動団」が運用する特殊車両です。陸と海両方を進むことができ、他国に侵略された島を奪還する作戦に投入されますが、運用上の課題が。

記者(先月22日)

「水陸機動団の象徴ともいえる水陸両用車ですが、相浦駐屯地には輸送艦に積むための岸壁がありません。なので、島での訓練のたびに輸送艦が待機する岸壁まで運ぶ作業が発生します」

水陸両用車を保管場所の相浦駐屯地から輸送艦が待つ岸壁まで運ぶ作業を取材しました。水陸両用車が単独で一般道を走るのには様々な制限があり、それを積んだトレーラーも、重量制限で走行は夜間に限られます。

水陸両用車は海上自衛隊の倉島岸壁まで運ばれ、ここで輸送艦に乗せることではじめて島へ展開できます。岸壁までの距離の問題に現場指揮官は…。

陸自水陸機動団 北島一 団長

「AAV7(水陸両用車)をトレーラーに積載をして移動させ、そしてそれをまたおろすというのは一定の時間かかりますので、これはより早めることができれば望ましい」

岸壁の問題。これらを解決するため、佐世保港内の崎辺地区に建設されているのが自衛隊の大型岸壁です。

これが完成予想図。将来的にはこの岸壁近くに水陸両用車を保管することで、輸送の手間をかけずに船に積み込めます。予想図には、すでに水陸両用車を搭載できる輸送艦も描かれています。

その崎辺には、戦時中まで日本海軍の航空基地がありました。

終戦直後の崎辺の映像。写っているのは日本海軍の水上観測機。連合艦隊の目となる部隊の拠点でした。

現在、補給や整備の部隊がいる崎辺地区に一連の施設が完成するのは5年後。その時風景は一変し、自衛隊の歴史でもほとんど例がない、陸海自衛隊統合運用の拠点が誕生します。

予算は、現在までの計上分で314億円。明治の時代から軍港として栄えてきた佐世保は、令和の時代、出撃拠点としての機能を拡大しようとしています。