「甲子園球場最寄りではありません」と言い続けて90年 スタジアムまで徒歩30分「甲子園口駅」が生まれたきっかけ

AI要約

阪神甲子園球場周辺には、阪神電鉄の甲子園駅とJR西日本の甲子園口駅があり、なぜ同じような駅名になったのかが説明される。

甲子園口駅は1934年に開業し、球場へのアクセスが比較的不便なため、甲子園という名前がつけられた理由が分かる。

阪神甲子園駅は、球場完成の1924年に開業し、「甲子」の年に合わせて命名された。球場周辺の発展と共に甲子園という地名が広まった。

「甲子園球場最寄りではありません」と言い続けて90年 スタジアムまで徒歩30分「甲子園口駅」が生まれたきっかけ

 今年で開場100周年を迎えた阪神甲子園球場。高校野球とプロ野球・阪神タイガースの聖地であるこの球場の近くには、「甲子園」の名前を冠した駅が二つある。阪神電鉄の甲子園駅と、JR西日本の甲子園口駅だ。どうしてこんなそっくりな駅名になっているのか? すべての始まりは、球場の建設だった。

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 夏の高校野球選手権大会の熱戦が続いている甲子園。遠方から球場を目指すファンは、JR新大阪駅や大阪駅に降り立つとこんな掲示やアナウンスに出くわす。

「阪神甲子園球場へは、阪神電鉄甲子園駅が最寄りです。JR甲子園口駅は最寄り駅ではありません」

 大阪・新大阪から甲子園口駅へは、神戸・三ノ宮方面の各駅停車に乗れば、乗換なしで行ける。甲子園「口」と命名しているのだから甲子園球場が近そうなのに、なぜわざわざ他社の駅に誘導するのか。

 実際にJR甲子園口駅で降りてみると、球場へは約30分をかけて歩くか、駅の南口から出ている阪神バスに乗る羽目になる。一方、阪神甲子園駅なら駅を出れば歩いて5分と経たずに甲子園球場の蔦が見えてくる。

 なぜ、JRの駅はこんな紛らわしい駅名になったのか――実は甲子園口駅は、1934年開業でこちらも今年で90周年と節目を迎える。

 阪神間で最も古い鉄道は、JR神戸線の愛称がついている東海道本線の大阪~神戸間で、1874年に開業した。この時の途中駅は神崎(現・尼崎)、西ノ宮(現・西宮)、住吉、三ノ宮のみだった。

 この官営鉄道の南側に、1905年に阪神電気鉄道が大阪から神戸までの電車路線を開業させる。これが現在の阪神本線だが、甲子園駅はまだ生まれていない。

 球場完成の1924年に、球場最寄り駅として開業した。この年が干支で一番初めの「甲子」の年だったことから甲子園と命名されたエピソードは有名だ。

 球場が人を集め始めると並行し、阪神は周辺の土地開発にも着手。武庫川の河原だった一帯はモダンな住宅地になり、「甲子園」の通称で呼ばれるようになった。1930年には、現在武庫川女子大学甲子園会館になっている瀟洒な甲子園ホテルも開業した。