那須・夫婦焼死体事件、逮捕までの舞台ウラを元刑事が解説 犯人グループの誤算「捜査本部が一番欲しかったのは“殺害現場”と“殺人の被疑者”」

AI要約

栃木県那須町の河川敷で夫婦の遺体が発見された事件で、殺人罪として事件の首謀者を含む男女計7人を逮捕・起訴した。

事件の裏側、逮捕に至ったポイント、そして犯人グループの誤算について詳しく分析を行ったリーゼント刑事こと元徳島県警警部の秋山博康氏。

遺体発見から逮捕、そして裏で繰り広げられた謀略の詳細について、事件の関係者と推理を交えて詳細に解説。

捜査の過程で浮かび上がった関係者の間に広がる疑惑や、現場検証を通じて明らかにされた事件の真相を丹念に語る。

那須・夫婦焼死体事件、逮捕までの舞台ウラを元刑事が解説 犯人グループの誤算「捜査本部が一番欲しかったのは“殺害現場”と“殺人の被疑者”」

 栃木県那須町の河川敷で夫婦の遺体が発見された事件で、殺人罪として事件の首謀者を含む男女計7人を逮捕・起訴した。この事件の裏側と逮捕に至ったポイントについてリーゼント刑事こと元徳島県警警部の秋山博康氏が分析した。

 4月16日、栃木県那須町の林道近くの河川敷で、男女の焼けた遺体が見つかった。目撃者や捜査関係者などによると、2人は仰向けで重なるような形で倒れて、顔に粘着テープをぐるぐると巻かれ、手は縛られた状態で足に結束バンドが見えたという目撃情報も。遺体のすぐそばでは、ガソリンなどを入れる蛍光管のような容器が焼けていたという。

 殺害されたのは、東京都台東区に本籍を置く宝島龍太郎さんと妻の幸子さん。死因は2人とも首を絞められたことによる窒息死で、幸子さんは頭に複数の骨折があり、鈍器のようなもので殴られたとみられている。

 遺体発見の翌日、車を貸しただけと参考人として出頭していた平山綾拳容疑者が、死体損壊の容疑で逮捕。その後、指示役とみられる佐々木光容疑者を那覇で発見し、逮捕。そして、実行役とみられる元子役俳優・若山耀人容疑者と韓国籍の姜光紀容疑者が相次いで逮捕された。

 平山容疑者の供述によると、佐々木容疑者が別の人物から1500万円を受け取り、そのうち1400万円を平山容疑者に、そして平山容疑者は900万円を得て、残りの250万円ずつを実行役の2人に渡したという。実際に平山容疑者の関係先からおよそ1000万円が見つかっている。

 黒幕として逮捕されたのは、被害者の娘の内縁の夫・関根誠端容疑者だった。宝島さん夫婦は“宝島ロード”と呼ばれる上野の飲食店オーナーで、有名な経営者だった。店の経営を巡って、宝島さん夫妻と関根容疑者はトラブルになっていたという。

 一方、ともに逮捕された不動産会社経営・前田亮容疑者は、関根容疑者とは古くからの友人で、店の常連だったという。夫婦が殺害されたとされる品川区の空き家は、前田容疑者の会社が管理する物件だった。

 長女の内縁の夫らが殺人容疑で再逮捕されたのち、被害者夫婦の長女・真奈美容疑者も殺人の疑いで逮捕・起訴された。

 この事件を取材した秋山氏は、ポイントとして「スムーズに犯人を検挙できたのは、犯人グループの誤算があった。平山容疑者が出頭したことで、そこから次から次へと被疑者を検挙し、逮捕できた」と語る。

「捜査本部で一番注目する、早く証拠を見つけたかったというのが“殺害現場”と“殺人の被疑者”。平山容疑者が出頭したときに時間をかけてあえて任意で取り調べをしたら、殺人の実行者、そして殺人現場である品川の現場が浮上した。ここがポイント」

 そして、本人に殺害方法や現場の様子などの供述調書を取ったのちに「引き当たり捜査」をおこなうとして「現場を本人に案内させ、その殺害現場を検証する」と説明。

「これが3日で終わった。殺人現場の検証を3日で終えるのは、ある程度証拠を押さえたということ。平山容疑者が出頭して、殺害現場を自白した。自白の内容に沿って、現場検証したら、数日間で証拠が一気に出てきた」

 また、平山容疑者が出頭したことで「協力者の名前が判明し、スマホを押収して、やり取りを解析する」ことができたとした上で、「殺人というのは行為犯、過失犯ではない。行為犯というのは絶対に動機がある。通り魔以外は。わざわざ捨てに行って焼いているということは、大体、犯人が被害者に身近な人物である可能性が高い。それと動機。被害者夫婦は莫大な財産を持っているため、それ目当てかという筋読みはやる。こうなると、捜査上、関根容疑者と真奈美容疑者は絶対に浮上する。関根容疑者についてはすでに逮捕されていた4人の容疑者らのやり取りから証拠が出てくるが、関根容疑者と真奈美容疑者が“共謀”であるかどうかに時間がかかった」と分析した。

 さらに、夫婦が遺体で見つかった際に真奈美容疑者は「大泣きして、相当泣き崩れていた」と説明した上で、「『あんな芝居できるのかな』と捜査員が言っていた。そういうこともあって、ちょっと時間がかかったのではないか」と推察した。

「昭和、平成、令和と現場の刑事をやってきて、こういった事件の共犯者に違いがある。昭和の共犯者は、主犯格が『全部俺が仕組んだ、俺が責任を持つ。あいつらはやっていない』というケースが多かった。平成に入ってからは、主犯格が『俺はやっていない。Aがこんなことをして、Bがこんなことをして、Cがこんなことをして…』となすりつける。これが平成の共犯者。令和になってからは、もうどこの誰かわからない。そういう違いはある」

(『ABEMA的ニュースショー』より)