トランプ氏銃撃でよぎった2年前の悪夢 警察庁が警戒徹底を緊急指示 問われる要人警護

AI要約

米大統領選を控えた7月、米共和党のドナルド・トランプ前大統領が集会で銃撃された事件は、警察庁内に緊張を走らせた。警察庁は47都道府県警に、改めて警戒の徹底を緊急指示し、国政選挙に備える姿勢を鮮明にした。

安倍晋三元首相が選挙の応援演説中に凶弾に倒れた2年前の事件を受けて、要人警護の高度化が求められている。今回の対応は素早く、海外の事件でも機敏な反応が示された。

過去の要人襲撃事件を経て、警察庁は要人警護の問題を重く受け止めており、警護体制の見直しを進めている。

トランプ氏銃撃でよぎった2年前の悪夢 警察庁が警戒徹底を緊急指示 問われる要人警護

米大統領選を控えた7月、米共和党のドナルド・トランプ前大統領が集会で銃撃された事件は、警察庁内に緊張を走らせた。奇しくも安倍晋三元首相が選挙の応援演説中に凶弾に倒れてから2年。露木康浩長官が会見で「今後とも警護の高度化を図る」と決意を述べたばかりだったが、警察庁は47都道府県警に、改めて警戒の徹底を緊急指示。国政選挙などを控え「悪夢を繰り返さない」姿勢を鮮明にしている。

■素早い対応

「信じられん…」。スマートフォンで「トランプ氏銃撃」の連絡を受けた警察庁の幹部は、こう絶句したという。

トランプ氏が銃撃されたのは7月13日(日本時間14日)。米東部ペンシルベニア州バトラーで、11月の大統領選で返り咲きを目指して演説中に撃たれ、右耳を負傷した。

警察庁の対応は素早く、街頭演説場所周辺の警戒と防弾資機材の活用の徹底を全国に指示した。9月には自民党総裁選があり、来年には参院選も控える。加えて、「いつ衆院の解散総選挙があるか分からない」(政府関係者)。

対岸の火事で済まされないとの意識が「海外の事件ながら異例の機敏な反応」(警察OB)につながったといえる。

■引責辞任の残像

安倍元首相は令和4年7月8日午前、奈良市の近鉄・大和西大寺駅前で、参院選の応援演説中に手製銃で射殺された。事件を受けて警察庁長官の中村格氏が引責辞任。要人警護の基本方針を定めた法令『警護要則』が28年ぶりに抜本的に改訂された。

だが、事件から1年足らずの昨年4月、岸田文雄首相が和歌山市の漁港で、衆院補欠選の応援演説直前にパイプ爆弾を投げられる事件が発生。幸い岸田氏は無事だったが、改めて要人警護の問題が浮き彫りになった。

今年6月の定例記者会見で露木長官は「(安倍事件は)痛恨の極み。(岸田事件も)重く受け止めている」とした上で「警護中の要人襲撃はあってはならない」と強調。トランプ氏銃撃の4日後にあった定例会見でも「選挙運動に伴う警護は格段に危険度が増す現実を、改めて突き付けられた」と発言した。

警察庁首脳経験者は「前任の中村氏が失意のまま職を退くさまを目の当たりにしているだけに、露木氏のまぶたにも残像があるはずだ」と指摘する。