「南海トラフ巨大地震」の恐怖を煽る政府、絶対に“口に出せない”本当の狙いとは?

AI要約

南海トラフ地震の警戒を巡る政府の煽りに対する批判が高まっている。

過度な危機煽りにより、人々の不安や防災予算獲得のための動機が疑われている。

一方で、危機意識の不足が会社や政府に深刻なダメージをもたらすこともあり、バランスを保つ必要性が浮かび上がっている。

「南海トラフ巨大地震」の恐怖を煽る政府、絶対に“口に出せない”本当の狙いとは?

● 「巨大地震は戦争と同じ」 為政者の頭の中

 「地震、地震って煽りすぎ」

 「コロナの時と同じで恐怖を煽り過ぎて経済が冷え込んでしまう」

 宮崎県沖の日向灘を震源とする震度6弱の地震を受けて初めて発出された「南海トラフ地震臨時情報」が批判を受けている。

 お盆休みに重なったということで、観光地で宿泊キャンセルが相次いだことに加えて、一部で水や食料品の買いだめをする動きもあり、コロナ禍を想起させるような「自粛パニック」が起きているからだ。

 そこに加えて、ここまで叩かれてしまっている背景には、地震予測に対して「どうせ地震学者が予算獲得のために話を大袈裟に盛っているんだろ」という否定的な意見が社会に広がってきたことも大きい。

 きっかけは昨年8月に発売された「南海トラフ地震の真実」(東京新聞)だ。著者は中日新聞記者の小沢慧一氏。ある学者から「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」という告発を受けた小沢記者は、地震発生確率が特別な計算式で水増しをされているという事実を知る。調査を進めるとその裏には、研究予算獲得を目指す地震研究者や、防災対策の「アリバイ作り」に奔走する国や行政など、それぞれの思惑があるということを突き止めていく、という渾身の調査報道だ。

 同書は「科学ジャーナリスト賞」や「菊池寛賞」を受賞して大きな話題になった。これを受けて「30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は70~80%」という政府予測も科学的に根拠のないデタラメという認識が定着。そのため今回の「南海トラフ地震臨時情報」に関しても、「ハイハイ、どうせそうやって危機を煽れば防災予算をぶんどってくることができるからでしょ」とシラける国民も多くなってしまった。

 要するに、南海トラフ地震の警戒ということに関して、日本政府は「オオカミ少年」のようになってしまったのである。

 ただ、個人的には政府が過度に危機を煽ってしまった気持ちもわからんでもない。危機管理の仕事をしていると、組織内部には必ず「危機に備えること」に後ろ向きな人が一定数いて、物事が一向に進まないからだ。

 彼らは危機管理体制の構築や、不祥事発生を想定したトレーニングなどが必要だと筆者が主張をすると、「そんないつ起きるかわからないことに予算や時間をかけるのは合理的ではない」とかなんとか反論をして、「備えよりも今が大事だ」という方向へともっていく。

 しかし、面白いもので、そうやって危機管理を軽視する幹部がいる企業に限って、会社に深刻なダメージをもたらすような不祥事が起きがちだ。経営者がボロカスに叩かれる炎上会見の報道を目にして、「ああ、あのときにもっと話を盛ってでも、危機意識を高めてあげておいたほうがよかったかな」と悔やむことは一度や二度ではない。

 官僚や学者が「予算獲得」という下心を持つのは紛れもない事実なのだが、一方で「危機意識ゼロの人たちを動かす」という目的のため、いたしかたなく確信犯的に「危機を煽る」という手法を選ぶ場合もあるのだ。

 そこに加えて、日本政府が「南海トラフの恐怖」を過度に煽ってしまうのには、もうひとつ大きな理由があるのではないかと思っている。