【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした

AI要約

積水ハウスが50億円以上ものカネを騙し取られた「地面師詐欺」事件がドラマ化され、多くの謎が残る中、売買条件の交渉が具体化し、12億円の手付金支払いが行われた。

海喜館の購入代金は70億円とされ、取引過程で疑問が生じるが、正式な取引が成立し、地面師グループの犯行が進展していた。

しかし、手付金支払いの直後に思わぬトラブルが発生し、事件の展開が予測不能な状況になる。

【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした

ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。

このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する。

【第1回から読む】あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相

4月20日、小山と生田が海喜館の売買条件について積水ハウス側の部長や部長代理と具体的な交渉に移る。そこで、60億円の売却金額で話が折り合い、契約の条件として、4日後の24日までに追加の手付金12億円を支払うことも決めた。残る48億円の支払いについては、7月末の決済とした。

なお、海喜館の購入代金はのちに70億円と公表されている。それは積水ハウス側がニセ海老澤佐妃子に対し、旅館売却後の住まい用などとして、自社のマンション購入を薦め、それらの取引額が含まれているからだ。さらに取引の過程で積水側は、70億円のうち63億円を先払いしたと発表したが、そこの疑問については後述する。

4月24日、西新宿のホウライビルにある積水ハウスの事業所で12億円の手付金が支払われた。紛れもない正式な取引だ。ビルの5階にある東京マンション事業部会議室に関係者全員が顔をそろえ、小山たちは海喜館の不動産権利証を用意した。海老澤佐妃子が半世紀も前に両親から譲り受けた書類だと前置きしたそれは、赤茶けていて、ところどころ破れかけていた。

「ほう、これはめずらしい。ずいぶん、古い権利証ですな」

積水ハウスの担当者は、前のめりになってそう漏らし、書類を本物だと思いこんだ。すぐに手付金として12億円の預金小切手を振り出し、ニセ佐妃子に手渡した。これにより売買予約の登記手続きができる。この時点で地面師グループの犯行は、50%以上進んだといえた。

だが、そこに思わぬ邪魔が入った。