「佐渡金山」が“朝鮮人労働者に配慮した展示”をするワケ 世界遺産登録のウラで「韓国」に譲歩しなければならない事情があった

AI要約

佐渡島の金山が世界文化遺産に登録されることが決まり、韓国の存在がネックになる中、日本政府が過去の朝鮮人労働者の存在に配慮した展示を行った。

朝鮮人労働者の徴用や違反者への処罰などを展示するものの、強制連行という言葉は避けられていた。地元の関係者によると、佐渡に残留した朝鮮人労働者の子孫が地元で有力な存在となっており、その存在にも配慮がされたという。

これまで朝鮮人労働者が関与していた場所の世界遺産候補があり、今後も同様の展示が続く可能性がある。

「佐渡金山」が“朝鮮人労働者に配慮した展示”をするワケ 世界遺産登録のウラで「韓国」に譲歩しなければならない事情があった

 7月27日、インドで開かれていた世界遺産委員会で「佐渡島(さど)の金山」が正式に世界文化遺産に登録されることが決まった。

 文科省の担当記者が言う。

「佐渡金山が世界遺産に立候補したのは2007年のことです。これまで何度も推薦書類を提出してきましたが、国の推薦候補に選ばれたのは21年になってから。今年6月には、ユネスコの国際記念物遺跡会議(イコモス)での正式登録を目指しましたが、結果は『情報照会』という一歩手前の評価でした」

 今回はいわば乾坤一擲の勝負だったわけだが、最大のネックが韓国の存在だった。

「佐渡金山では戦時中に約1200人の朝鮮人労働者が働いていたとされ、韓国政府は強制労働であると反発していました。これを踏まえてユネスコは佐渡金山の歴史を“包括的”に扱うよう日本に求めてきたのです。つまり、朝鮮人労働者の存在に配慮した展示をしなさいということです」(同)

 15年に登録が決まった長崎市の軍艦島でも、日本の元島民が否定しているのに「朝鮮半島労働者の強制連行」の展示表記を韓国側が強く求め、ユネスコもこれに同調する事態となった。

 政府は21年に閣議決定で強制連行を否定した。ところが今回は、戦時中に、朝鮮半島労働者の徴用が行われ、違反者には懲役・罰金が科されたこと、また、逃走したり収監されたりした者もいたことなどを現地施設(佐渡市の相川郷土博物館)で展示していると説明している(政府代表ステートメント)。強制連行という言葉こそないが、それを匂わせることで “手打ち”をしたというわけか。

 そこで、世界遺産に関係する省庁のまとめ役となった内閣官房の「世界遺産登録等に向けたタスクフォース」の担当者に聞いてみると、

「さまざまな評価はあると思いますが、わが国の立場を踏まえての展示表記だということです」

 佐渡市の関係者が次のように明かす。

「佐渡金山の場合、戦後、故国に戻らず地元に残った朝鮮人労働者もいました。軍艦島と違うのは、彼らの子孫が佐渡にいて有力者にもなっていること。今回は彼らの存在にも配慮したのでしょう」

 佐渡金山の後に続かんとする世界文化遺産候補の中にも朝鮮人労働者が働いていた場所がある。同様の展示が、これからも続くのだろうか。

「週刊新潮」2024年8月8日号 掲載