平成事件史 戦後最大の総会屋事件(15)ーなぜ警視庁幹部はワイロを受け取っていたのか、見返りは・・・小池隆一事件の「ブツ読み」から浮上した前代未聞の警官汚職

AI要約

総会屋と呼ばれた人物が巨額のカネを要求し、株式を購入して大株主となる事件が起きた。

捜査中に警視庁幹部がワイロ受け取りで逮捕されるという前代未聞の事件が発生した。

金融機関から大蔵官僚への接待疑惑も浮上し、捜査は波状的な進展を見せていた。

平成事件史 戦後最大の総会屋事件(15)ーなぜ警視庁幹部はワイロを受け取っていたのか、見返りは・・・小池隆一事件の「ブツ読み」から浮上した前代未聞の警官汚職

かつて「総会屋」という裏社会の人々がいた。毎年、株主総会の直前になると「質問状」を送りつけて、裏側でカネを要求した。昭和からバブル期を挟んで平成にかけて、たったひとりの「総会屋」が、「第一勧業銀行」から総額「460億円」という巨額のカネを引き出し、それを元手に野村証券など4大証券の株式を大量に購入。大株主となって「野村証券」や「第一勧銀」の歴代トップらを支配していた戦後最大の総会屋事件を振り返る。

大手証券会社にカネをたかっていたのは、総会屋だけではなかった。

東京地検特捜部による総会屋事件の捜査は、波状的な進展を見せ、金融機関から大蔵官僚への接待疑惑が浮上していた。そんな中、想定外のことが起きる。

汚職や詐欺など知能犯罪捜査のエキスパートと言われていた現職の警視庁幹部が、みずからワイロを受け取って逮捕されるという前代未聞の不祥事が発生した。関係者の証言をもとに今だから明かせる捜査の舞台裏の一端を描く。

■警視庁幹部を電撃的に逮捕

「金融腐食列島ー呪縛」という映画にもなった野村証券、大和証券、日興証券、山一証券の4大証券、それに第一勧業銀行による「総会屋」小池隆一に対する巨額の利益供与、損失補てん事件。4大証券から「総会屋」小池隆一側へ流れた金額と回数を整理しておこう。

あくまで立件分にすぎないが、第一勧銀からの「う回融資」は「約118億円」、野村証券から利益の付け替えが6回で「約4700万円」と「現金3億2,000万円」、大和証券は付け替えが68回で「約2億円」、山一証券が利益の付け替えが32回で「約1億7,000万円」に上った。

前年1997年から続いた4大証券、第一勧銀から総会屋への利益供与事件は、次のステージへ舞台を移していた。

年が明けた1998年1月、TBS司法記者クラブは、大蔵省OBの「日本道路公団」幹部の収賄事件の「X」デーが近いと見ていた。他社の司法記者もほぼそう予想していた。東京地検特捜部の最終ターゲットは「大蔵キャリアの接待汚職」だった。その前哨戦とも言える大蔵省OBの「日本道路公団理事」への捜査が、まさに秒読みだったのである。