鈴木涼美が「安っぽい肉体関係」の果てに気づいた、“彼の元カノ”への嫉妬の正体 今も抱える「劣等感」とは

AI要約

パートナーの過去に嫉妬してしまう女性の悩み。自分の過去の恋愛経験に自信がないことが原因かもしれない。

過去の恋愛経験が未熟だったため、相手の過去に対する嫉妬が強くなってしまった経験を振り返る。

成熟した恋愛経験を積んでいなかったことが、パートナーの過去に対する嫉妬心の原因となっている可能性がある。

鈴木涼美が「安っぽい肉体関係」の果てに気づいた、“彼の元カノ”への嫉妬の正体 今も抱える「劣等感」とは

 作家・鈴木涼美さんの連載「涼美ネエサンの(特に役に立たない)オンナのお悩み道場」。本日お越しいただいた、悩めるオンナは……。

Q. 【vol.19】パートナーの昔の恋に嫉妬してしまうワタシ(50代女性/ハンドルネーム「ヌノナナ」)

 私は好きな人ができて離婚をしました。新しい相手は同性です。初めて異性ではない人に恋をしました。パートナーにも一緒に住む彼女がいましたがその人と別れ、今は私と一緒に暮らしています。この先の人生を一緒に生きていく約束をし、パートナーシップの届けを出しました。

 他の人から見るとおそらく、いや確実に幸せなんだと思います。だけどパートナーの過去が気になり、過去の話に嫉妬してしまいます。それが原因でけんかをすることもあります。自分がこんなにも嫉妬深いとはこの歳になるまで思いもしませんでした。つらすぎて毎日涙が出たり眠れなくなり、こんなにつらいのならば別れようと本気で考えたこともありました。しかし別れるつらさを想像しただけで踏みとどまり、いつになっても嫉妬心の呪縛から解放されません。自分がわがままなのは知っています。どのように気持ちの折り合いをつけたらよいでしょうか。

A. 鍵は自分の過去にあるかも。

 二十三歳の時に付き合った十歳近く年上の彼に対して、過去の女性関係をどうしても受け入れられず、ひどく嫉妬して苦しんだ経験があります。どうしてそんなに人の元カノの存在が許しがたかったのか。今振り返ると、自分の恋愛経験に自信がなかったからではないか、と少し思います。自分には今でも大切に思っているような元恋人も、一世一代の恋の記憶も、思い出すだけでキュンとするような青春時代もない。その劣等感が、自分よりずっと充実した恋愛を重ねてきたのであろう年上の恋人の過去へと向かっていた気がするのです。

■モテる女とヤレそうな女をはき違えていた

 二十歳前後の私というのは、特定の人と深い関係を結ぶというのが本来的にどういう行為なのか、まだあまり理解していませんでした。周囲に男性はいるものの、自分にとって誰かが特別な存在だと思ったことも、誰かにとって自分が特別な存在だと思ったこともなく、彼氏と呼べる人ができてもたいていは短期間で関係に飽きてしまったり、何か気に入らないところが見つかったりしてすぐ別れるばかりでした。

 高校生であっても何年も同じ人と付き合い、お互いの面白さやくだらなさを確認しながら将来を考えるような関係を結ぶ人はいるのでしょうが、私はそういう成熟したところはまったくなく、恋に恋してその真似事をするのが精いっぱいだったわけです。モテる女とヤレそうな女をはき違えて、安っぽい肉体関係を繰り返していました。

 二十三歳で付き合った彼とはそれまでの恋よりは少し進んだ、一緒に暮らしたり一度や二度は将来について話したりする関係を紡いでいました。今から思うとあの時の私もまた、成熟した男性とのちょっと大人な付き合いに舞い上がっていただけとも言えますが、とにかく当時は自分がようやくまっとうな、真面目な恋愛関係の渦中にいるような気がしていたのだと思います。

 そうなってくると、自分にとっては色々と初めてのことが多いのに、相手にはすでにそういう真面目な恋愛の経験も、誰かと一緒に暮らした経験も、高い指輪を買った経験もあることがとにかく気に入らない。同時進行で何か女性の影があるわけでもないのに、自分が二番手三番手の役回りをやらされている気分になってすぐにいらいらとやつあたりをする日々でした。