「絆會」トップの逮捕は連続ヒットマン事件解明のはじまりなのか?

AI要約

山口組の分裂抗争に絡み、組織内での不正行為が次々と発覚し、指導者たちが逮捕される混迷が続いている。

織田会長が事務所の不正登記容疑で逮捕されたが、これがラーメン店主射殺事件への関与立件への入り口となる可能性がある。

警察当局は、織田会長が借金返済のために因縁深い組長の射殺を指示したかどうかを模索し、組織犯罪処罰法に基づいて重い刑罰を課すための捜査を進めている。

「絆會」トップの逮捕は連続ヒットマン事件解明のはじまりなのか?

山口組の分裂抗争に絡み、組織のナンバー2・金澤成樹若頭が2件の殺人事件で逮捕され、瀬戸際に立たされている絆會(きずなかい)。今度は、事務所の不正登記に関与したとしてトップの織田絆誠会長が逮捕される事態に発展した。

織田会長は、連続ヒットマンとして知られる金澤若頭が実行したとされるラーメン店主射殺事件への関与の有無も取り沙汰されており、今回の逮捕が、本命の事件での立件への入り口となる可能性に、関係者の注目が集まっている。

■逮捕容疑は"微罪"

織田会長は7月9日、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで、岡山に拠点を置き、実質的な同盟関係を組む池田組の池田孝志組長とともに大阪府警に逮捕された。事件の概要を全国紙社会部デスクが解説する。

「織田会長は2020年2月、自らが債務者となって、大阪市中央区島之内にある絆會の本部事務所などの土地と建物を担保として抵当に入れて、本来は池田組長から1億円を借りたのに、池田組長の姪から借りたように装う虚偽の登記を行ったとして逮捕されました。

事件当時は、織田会長は既に神戸山口組から離反して絆會を立ち上げていました。一方、池田組は同年7月に神戸側を離脱して独立組織となりましたが、当時はまだ神戸側の陣営にいました。

池田組長は、織田会長が神戸から離脱しても物心両面で面倒を見ていたとされ、当時在籍していた神戸側への配慮から池田組長の氏名を登記に記載させないため、姪との取引という体裁を取ったとみられています。ただ、23年8月に根抵当権が抹消されており、登記上はすでに金銭貸借は解決している格好となっている。大物ヤクザを狙い撃ちにした微罪逮捕という側面は否めません」

■射殺事件後に根抵当権抹消

ここで注目したいのが、根抵当権が抹消されたのが23年8月である点だ。この4か月前の同年4月22日、神戸市長田区のラーメン店において、店主で山口組弘道会の余嶋学組長が射殺された。発生当初から金澤若頭が実行役だとの情報が流れ、追跡捜査が注目された。

そして、今年2月に金澤若頭が潜伏先の仙台市内のアパートで逮捕。金澤若頭が起こした長野・水戸での事件の起訴が済んだのちに、6月に本命のラーメン店主射殺事件で兵庫県警が金澤若頭を含む絆會関係者を逮捕。同月28日に金澤若頭や絆會幹部計3人が組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人)と銃刀法違反の罪で起訴された。

「余嶋組長の頭部に残っていた銃弾の線条痕が、金澤若頭が逮捕時に所持していた拳銃のものと一致しており、他の幹部も嫌疑が掛けられていることから絆會の組織的犯行だったことは固い。そして、射殺事件後に1億円の借金が清算されています。

こうした点から警察当局は、織田会長が借金返済のために、過去に池田組幹部を射殺するなど因縁深い弘道会の組長の射殺を指示したとして立件できないかと模索しています。組織犯罪処罰法は、複数犯の事件での突き上げ捜査で、上位者の関与を立証しやすく、そのうえで刑法よりも重い刑罰を課せられるので、当局にとって使い勝手のいい打ち出の小槌のような法律だとされています。

過去の暴力団事件でも立件例はありますし、最近では頂き女子りりちゃんを名乗る女から金銭を受け取っていたホストの男にも適用されています」(前出デスク)

■スタンドプレーか鎮圧の前兆か