異例の対応「みどりの窓口」期間限定で“復活”…実際に訪れて分かった「どう考えても窓口の廃止はおかしい」

AI要約

2021年に始まったみどりの窓口の削減計画が順調に進み、JR東日本は半数以下の209カ所まで減少させた。

しかし、コロナ禍が収束し旅行需要が回復すると、窓口混雑が深刻化。JR東日本は計画の一時凍結を余儀なくされた。

7月10日から期間限定でみどりの窓口が一部の駅で再開。利便性の問題や混雑対策が検証されている。

異例の対応「みどりの窓口」期間限定で“復活”…実際に訪れて分かった「どう考えても窓口の廃止はおかしい」

 7月10日から期間限定ではあるものの、JR東日本の一部の駅でみどりの窓口が復活した。再開するのは50の駅で、仙台駅や長野駅、船橋駅などのように窓口の数を減らした駅から、南越谷駅、北千住駅、川口駅などのように、駅員と通話しながら操作ができる「話せる指定席券売機」が設置されて窓口そのものがなくなった駅まで様々だ。

 今回の決定は、鉄道ファンは言うに及ばず、JR東日本の社員の間でも驚きをもって迎えられたようである。一度決定したことを滅多に覆さないJR東日本が、利用者やネットの声を受けて方針転換を図ったのか、という具合だ。それほど、みどりの窓口廃止は大きな問題となっていたのである。

 2021年、JR東日本は切符をネットで買い求めるチケットレス化の推進を決定。その一環として、2025年までに、440カ所にあったみどりの窓口を140カ所まで削減する目標を立てていた。その計画は順調に進み、半数以下の209カ所まで減少していた。半分以下に減っており、かなり大胆にバッサリ切ったことになる。

 ところが、2023年に入ると、コロナ騒動が終息。国内の旅行需要が回復し、インバウンドの増加に伴い、みどりの窓口は慢性的に混雑するようになった。そして今年に入り、状況が著しく悪化する。4月は定期券の購入シーズンとなり、さらにGWには利用者が押しかけて窓口が大混乱となり、時には怒号が飛び交うなど、未曽有の混雑が続いていた。

 にもかかわらず、JR東日本はみどりの窓口を容赦なく廃止し続けていた。そのため、利用者はもちろんだが、おそらく駅員の間からも不満が噴出したのであろう。混乱を受けて、JR東日本は5月8日、みどりの窓口を削減する計画を一時凍結すると発表した。

 筆者の最寄り駅である武蔵野線の南越谷駅は、みどりの窓口が廃止され、使いにくいとして悪評が高い「話せる指定席券売機」が置かれていたが、このたび、めでたくみどりの窓口が復活した。7月10日~18日という期間限定で、営業時間は10~12時、13~17時である。閉鎖前より限られた時間帯での営業ではあるものの、実際に駅を訪れてみると、パーティションで封鎖されていたスペースにみどりの窓口が復活していた。

 7月10日~18日に復活したのは、お盆の帰省シーズンの切符を販売するためと思われる。新幹線や特急の指定席は乗車日の1カ月前の10時から販売開始されるのだ。埼玉県は地方出身者が多く住む県の一つなので、この時期は切符を買い求める客でどの駅も慢性的に混雑する。それを想定しての対応であろう。

 首都圏近郊のJR東日本の路線の中でも、武蔵野線は極端なまでにみどりの窓口が閉鎖された路線である。数年前は大半の駅にみどりの窓口があったのだが、南浦和駅や北朝霞駅など、他社線との乗換駅まで閉鎖してしまったのは明らかにやりすぎであった。結果、沿線で数少ない、みどりの窓口が現存する武蔵浦和駅が混雑するようになってしまった。しかも武蔵浦和駅はカウンターが1カ所しかないため、平日でも行列ができることが珍しくなかった。

 南越谷駅の指定席券売機の前には、駅員が作成したであろうポスターが掲げられていた。“お手伝いが必要なお客さま”は窓口へ、“ご自身で操作できるお客さま”は券売機へと誘導しようとしている。興味深いのは“ご自身で操作できる”の箇所にわざわざアンダーラインが引かれていることだ。極力、券売機に誘導し、みどりの窓口を使わせないようにしている印象を受ける。

 しかし、指定席券売機はとにかく使いにくいのである。以前に大宮駅を取材した際にも感じたことだが、人々はみどりの窓口が開いているならそちらで買いたくなるものだ。大宮駅ではみどりの窓口が40分待ちという状況だったが、十数台ある券売機はガラガラであった。誤操作で間違った切符を買うリスクもあるため、自信がない人は券売機で買うのが不安なのである。