実家の書店で店番中に現れた見合い相手と半世紀 「女王蜂になろう」と決めた妻が「定着養蜂」に切り替えた夫と育てる「宝物」

AI要約

美作さんと文江さんの半世紀にわたる結婚生活を紹介。見合いを経て直感で結婚し、養蜂事業を営み、家族と共にはちみつカフェを運営する様子が描かれる。

美作さんは鹿児島出身で移動養蜂を行い、定着養蜂に転身。結婚した文江さんと共に養蜂事業を拡大し、家族での仕事を楽しむ。

家族の絆やはちみつへの情熱が溢れる記事で、美作さんと文江さんの人生を通じて豊かな暮らしを育んできた姿が描かれる。

実家の書店で店番中に現れた見合い相手と半世紀 「女王蜂になろう」と決めた妻が「定着養蜂」に切り替えた夫と育てる「宝物」

 「実家の書店で店番をしていたら、見かけないお客さんが入ってきて。あっ、この人がお見合いの相手かな、と」

 半世紀も前のことを詳細に覚えている妻の文江さん(74)。初めて出会ったのは見合いを勧められるまま、まだ相手の写真も見ていない時。それから2カ月で結婚した決め手は「直感でした」。

 そう語る様子を、夫の美作(みまさか)さん(82)が細く優しい目で見守る。長年連れ添う夫婦ならではの穏やかな空気に包まれる。

 美作さんは鹿児島・大隅半島で生まれ、長崎の養蜂家に弟子入り。春から秋にかけて鹿児島から北海道まで、菜の花やレンゲ、クローバーなど花が咲くタイミングに合わせ、蜜を求めて北上する生活を送っていた。

 巣箱を運びながら旅をする「移動養蜂」から、一定のエリアに巣箱を置く「定着養蜂」に切り替えたのが1966年。親方から佐世保での権利を譲り受けた。仕事も軌道に乗り、73年11月2日、佐世保生まれの文江さんと式を挙げた。

 文江さんは養蜂の話を聞いて面白そうだと感じていたといい、自分自身が家族を豊かにする「女王蜂になろう」と心に決めた。巣箱の管理、採取した蜜の販売、イチゴ農家など受粉が必要な農家への蜂の貸し出し…。夫婦で一緒にする仕事は楽しく、巣箱を置く土地を購入して広げていった。

 半世紀の歩みを夫婦は「1+1=2+α」と表現する。長男と長女の2人の子どもに恵まれ、孫が誕生し、ひ孫もできた。

 3年前には大村湾に面する川棚町小串郷に「はちみつカフェ・オリーブハニー」をオープン。周囲に植えたオリーブの実からできる油は料理に使い、パンやスイーツには「清水養蜂場」の蜂蜜を好きなだけかけることができる。週末には遠方からも多くの来客があり、文江さんや長男ら家族と親戚6人で切り盛りする。美作さんは「養蜂場もカフェも、みんなが一生懸命働いてくれる。お客さんからも、『対応が優しくて丁寧』と言ってもらえる」と満足そうに話す。

 家族の暮らしや心を豊かにすると誓った文江さんにとって、蜂蜜は「金や銀にも勝るお宝のようなもの」。そしてこの仕事を続けることができたのは、結婚したパートナーが「優しい人だったから」。

 一方の美作さんはひょうひょうと応じる。「ま、けんかもしながらね。人生だもんね」

 多くの人を魅了する100%佐世保産の清水さん夫婦の蜂蜜。半世紀続いた歴史を、子や孫の代が紡いでいく。 (重川英介)