トンカツが和食なら、カレーやラーメンも和食なのか? その知られざる起源

AI要約

和食の定義や起源、世界的な人気について述べられている。

和食と洋食の違いや和食の変遷、国際化について考察されている。

日本食レストランにおける和食の概念や今後の展望について述べられている。

トンカツが和食なら、カレーやラーメンも和食なのか? その知られざる起源

外国の友人に、和食をご馳走するなら、何がよいだろうか。多くの人は、スキヤキ・テンプラ・スシなどを思い浮かべるだろう。しかし実をいうと、それらは日本発祥の料理ではないという。では、和食とは何を指すのだろうか。その起源と歴史をたどってみよう(ここでは原田信男『日本料理史』から一部編集のうえ引用する)。

二〇一三年十二月、和食がユネスコ無形文化遺産として登録された。そして現在、和食が世界的なブームとなっている。肉や脂を多用する西洋料理に較べて、米と魚類や野菜を中心とした和食はヘルシーで、美容や健康に良く、理想的な食生活のスタイルとして、世界的に注目を集めている。

かつて欧米など海外の日本料理店は、一部の愛好家か、日本からの旅行客や滞在者を主な客層としていたが、近年では地元の人々も通うようになった。

二十一世紀に入った段階で、世界の日本食人口(日本食を一年に一回以上食べる人)は、推定で約六億人おり、世界にある日本食レストランは二万四千店に及ぶとされている〔朝日新聞:二〇〇五〕。アメリカのみならずヨーロッパさらにはアジアでも、寿司バーや回転寿司が人気で、和食は着実に世界各地に浸透しつつある。

しかし、この和食という概念は、なかなか厄介である。そもそも海外の日本食レストランという規定自体が問題で、この記事には、そのメニューが分析・紹介されているわけではない。

おそらく海外の日本食レストランには、例外なくトンカツ定食があるだろう。ちなみに最近トンカツは世界的に人気だそうである。テンプラならまだしも、トンカツが和食なら、カレーやラーメンも和食か、という疑問もおきてくる。

これに関しては、トンカツやカレーあるいはオムライスなどを洋食と規定し、西洋料理のうちでも日本化した料理については洋食の概念に加える考え方もある。しかし「洋食」の語は、幕末・明治期に登場するもので、明らかに西洋料理を指している。

従って、それらを和風洋食とするのならまだしも、日本化した西洋料理を洋食と呼ぶのは不適切である。今日、洋食を食べに行こうといえば、フランス料理店やイタリア料理店に行くことを意味する。それが日本人向けに多少アレンジされていたとしても、基本的にはそれぞれの国々の料理原則が守られていればよい。

しかし厳密には、イタリア料理がフランス料理の原型となっているように、国別の料理といっても、それぞれに影響し合うし、時代によっても変化する。

これは和食についても同様である。たとえば典型的な和定食といえば、あくまでも刺身か焼魚・煮魚に、冷や奴あるいは煮物といった組み合わせが原則となり、和食では味噌や醬油といった調味料の重視が基本となる。

ところが料理体系を歴史的に考えてみれば、現在のスタイルとしては、米の飯に味噌汁と漬物があれば、おかずは何であろうと和食となっている。この組み合わせを守れば、トンカツでも焼き肉でもハンバーグでも、たちまち和定食が出来上がる。焼き肉やハンバーグでも、大根おろしを添えて醬油で食べれば、立派な和風料理となる。

今、ここで敢えて和定食・和風料理という言葉を用いたが、これを日本食・日本料理という語に変えても、これらを和食と称することに大きな違和感はないだろう。