”平和の砦であり続けるために”開館35周年のひめゆり平和祈念資料館が力を入れるワークショップ

AI要約

ひめゆり平和祈念資料館は、沖縄戦で動員されたひめゆり学徒隊の戦争体験を伝えるために活動している。

資料館は、後継者育成や展示方法の工夫などを通じて、戦争の悲惨さと平和の尊さを伝える取り組みを継続している。

最近では、ワークショップを通じて若い世代にも戦争体験を伝える取り組みが行われ、先生や子どもたちが参加している。

”平和の砦であり続けるために”開館35周年のひめゆり平和祈念資料館が力を入れるワークショップ

沖縄戦で看護要員として動員されたひめゆり学徒隊の戦争体験を伝えるひめゆり平和祈念資料館が、2024年で開館35周年を迎えた。

戦争の悲惨さや平和の尊さを伝えるため活動を続けてきた資料館のこれまで、そして現在の取り組みを取材した。

沖縄戦で亡くなったひめゆりの生徒や教師たちのための慰霊碑『ひめゆりの塔』

慰霊碑のすぐ近く、ひめゆり学徒隊の沖縄戦の体験を伝えているのが1989年6月23日に開館した『ひめゆり平和祈念資料館』です。

ひめゆり学徒隊の引率教師だった仲宗根政善さん(開館当時):

感無量ですよ。ちょうど今日の日(慰霊の日)に建てられました。命(ぬち)どぅ宝(命こそ宝)。すごくそう思います。だから平和の拠点にしてほしい

沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の2つの学校から看護要員として、沖縄戦に動員されたのは10代後半の生徒たち。

軍と行動をともにし、動員された生徒や教師240人のうち、半数以上の136人が亡くなった。

上原当美子さん:

大変でしたよ。あっちからこっちから。足がない人はね、「女学生さん、ウジとってくれ。飯くれ、飯くれ」。もうこれの繰り返しです

元学徒たちは資料館で自らの戦争体験を伝え続けてきたが、自分たちが語れなくなってもその体験を伝えていくために、後継者の育成にも積極的に取り組んだ。

現在は普天間館長をはじめとする“戦後生まれ”の職員たちがその役割を継いでいる。

ひめゆり平和祈念資料館 普天間朝佳 館長:

私たちは体験者の彼女たちと仕事を一緒にする中で、長年彼女たちから戦争の話を聞いて、その思いを受け取ってきました。これからはそのバトンを受け取った私たちが、多くの方々に伝えていかなければならないと思っています

2021年には、これまでの展示方法では若い世代にはわかりづらいのではないかと展示をリニューアルするなど、伝えるための工夫を重ねている。

いま力を入れているのが、「自分ごと」として受け止めてもらうための取り組みである。

2023年に初めて実施したのが「高校生が同世代に伝えるためのワークショップ」。

ワークショップで行ったことを、今度は生徒が自らのクラスで実施。

ひめゆり平和祈念資料館の古賀徳子さんは、授業で聞いたことを「これを伝えなくちゃいけない」で終わるのではなく、自分たちも「伝える側」になるということを感じてくれたと、ワークショップに手応えを感じている。

2024年は生徒ではなく、豊崎中学校の先生たちがワークショップを学びに来た。

先生たちも戦後生まれで、資料館に初めて足を運んだ人もいる。

ひめゆり平和祈念資料館 古賀徳子さん:

ひめゆり学徒隊の“ひめゆり”とは何でしょう?これは学校の愛称です

クイズ形式でひめゆり学徒について学んだあと、写真を読み解く『フォトランゲージ』にも取り組みました。

相談する先生たち

「アメリカ軍が日本人を手当してあげているんだよという」

「やさしいアメリカ軍?」

「そんな感じかな」

『フォトランゲージ』は、写っている人が何をしているのか、どんな人がいつどこで撮ったのかを考え、タイトルをつけていきます。

さらに、元ひめゆり学徒の証言をもとに描かれたイラストでも、同じように考えていきました。

相談しあう先生たち

「自分だったらどうなんだろうかな」

「右側の壕の中の人たちは、自決しようとしているんじゃないかということと、家族も死んでしまったから、自分たちは生き延びる必要はないから死を選んだのかなと」

別の班の先生: 

何かを決意している顔とか、泣いて祈っていたり、不安そうな顔をしていたりするので、同じように自決かなと思いました

この絵は元学徒の大城信子さんの証言をもとに描かれたものです。

ひめゆり平和祈念資料館 古賀徳子さん:

投降する人々の中に先生や他の生徒の姿を見て、信子さんは「姉さん、先生も学友たちも出ていくよ、一緒になろう、今は死にたくないよ」と泣きながら姉の手をおさえたそうなんですね

自分で想像し、考えることに重きを置いたワークショップを先生たちが体験し、今度は学校で子どもたちに伝えます。

豊崎中学校 金城晴美 先生:

子どもたちにも考えさせる、そして自分の意見を述べたり他の人たちの意見が聞ける、すごく良い機会だなと思うので、ぜひやってみたいなと思います

豊崎中学校 下里優季先生:

これをきっかけにして、私も沖縄戦に関しての知識を増やして、子どもたちに伝えていけるような力をつけていきたいなと感じました

こうしたワークショップを可能にしたのも、元ひめゆり学徒たちの証言や資料があってこそである。

ひめゆり平和祈念資料館 古賀徳子さん:

沖縄戦の非常に過酷な体験や、追い詰められ自決をするかどうするか悩んでいる場面など、そういういろいろな場面の証言イラストがあるので、外に伝えていくことは大切なんですが、自分たちが直接行って伝えるだけじゃなくて、伝えてくれる人を増やしていくということも大事かなと思っています

平和の砦であり続けるために、伝え方を工夫しながら戦争の悲惨さ、そして平和の尊さを発信しつづけます。

(沖縄テレビ)