【Q&A】無呼吸症の医療器具が心配な方へ、疑問にお答えします

AI要約

睡眠時無呼吸症候群の治療に使用されるCPAP装置に問題が見つかり、自主回収が続いている状況について報告。

防音材の劣化によりCPAPから放出される化学物質の健康被害リスクが懸念され、製品の自主回収が行われている状況を解説。

フィリップス社の説明とFDAの見解の食い違いについて言及。健康被害リスクに関する議論の行方が不透明な状況。

【Q&A】無呼吸症の医療器具が心配な方へ、疑問にお答えします

(※このたび国際文化会館ジャーナリズム大賞・特別賞ファイナリストに選出された記事です。初出は2023年9月5日。データや名称などは当時のものです)

夜中に何度も呼吸が止まり、十分な眠りが取れなくなる「睡眠時無呼吸症候群」。その治療に使われる米フィリップス製のCPAP装置(空気を鼻から送り続ける医療器具)などに問題が見つかり、2年たったいまも自主回収が続いています(※記事掲載当時)。

この問題、スローニュースで『無呼吸症の医療器具で「健康被害のおそれ」、いまだ回収中で被害報告も』として報じて以来、様々な質問や問い合わせを受けています。

そこで今回、患者にとってどんなリスクがあり、持っているCPAPは大丈夫なのかなどについて、取材した記者の萩一晶さんにポイントを整理してもらい、回答していただきました。

防音材は器具本体の内部、空気の通り道に入っており、特殊ドライバーを使って裏ブタを開けないと見ることができません。黒っぽい色をしたポリウレタンで、スポンジのような素材です。

この素材が劣化すると、①細かい粒子となる、②揮発性有機化合物(ガス)を放出する、という二つの問題を起こし、患者がマスクから吸い込むことで健康被害を受ける恐れがあるとして、製品の自主回収が始まりました。素材が劣化して排出されたと思われる黒色の小さな粒が、空気の出口となるマスク付近で見つかったという報告もあります。「改善品」では、防音材は白いシリコーン素材に取り替えられています。

米フィリップスは2021年のリコール発表当初、防音材の劣化により生じる微小な粒子にはジエチレングリコール(DEG)、トルエンジアミン異性体(TDA)、トルエンジイソシアネート異性体(TDI)という三つの化学物質が含まれている恐れがあり、最悪の事態としては気道の炎症や頭痛、喘息、腎臓や肝臓といった臓器への有害作用や毒性・発がん作用の可能性が考えられる、と説明しました。とりわけ肺に基礎疾患のある患者や心臓予備能が低下している患者には重大な問題となる可能性がある、とのことでした。

また、防音材の劣化により放出される揮発性有機化合物についても、ジメチルジアゼンなど2種類の化学物質が含まれている恐れがあり、最悪の事態としては目鼻や気道への刺激、吐き気、毒性・発がん作用の可能性が考えられるとしました。

その後、同社は軌道修正し、当初発表はデータが限られていて発がんの可能性を排除できなかったが、検証試験を重ねてわかったとして、「明らかな健康被害を招きそうにはない」と主張しています。しかし、FDAは製造元のこの発表の後も依然として「調査中」としており、取材に対し「この問題の健康被害リスクに関するFDAの考え方に何ら変更は生じていない」「私たちは違う結論に達するかもしれない」と答えています。