高齢者宅狙い査定の隙に窃盗、訪問買い取りトラブル増加…「亡くなった主人との思い出の品が」

AI要約

福岡県内で訪問買い取りを巡るトラブルが増加している。高齢の独居女性が狙われるケースが多く、被害が顕著になっている。

男が訪問買い取り名目で女性宅を訪れ、金品を盗む手口が広域に及んでいる。福岡県警が捜査を行い、被害総額は400万円以上に上るという。

買い取ったり盗んだりした品を業者で換金するグループが複数存在し、他県でも同様の事件が発生している。警察が注意喚起を行っている。

 訪問買い取りを巡るトラブルが福岡県内で増加している。福岡県警は25日、買い取り名目で訪問し、貴金属を査定する隙にネックレスを盗んだとして、福岡市の男(31)を窃盗容疑で逮捕したと発表した。高齢の独居女性が狙われるケースが多く、県警が注意を呼びかけている。(藤本鷹史)

 「玄関の有田焼の花瓶を褒めてくれた。それで見る目があるな、と信じてしまって」

 窃盗被害に遭った筑後地区の70歳代女性は取材に対し、当時をこう振り返った。

 女性宅をスーツ姿の男が訪ねてきたのは昨年12月。男は商業施設に入っている業者と説明し、「(旧紙幣の)100円札ありませんか」と尋ねて言葉巧みに家に上がり込むと、「宝石査定しますよ」などと次々に要求。最終的には、数十万円したというめがねを1万円で買い取られた。去り際に耳元でささやかれた言葉は「老人の独り暮らしか」。何をされるかわからない恐怖を感じたという。

 更に男が去った後、ダイヤ付きの金のネックレスが盗まれたことが判明。県警によると、男はばれないよう自分の懐に入れたといい、女性は「亡くなった主人との熱海旅行で身につけた思い出のネックレス。悔しくてたまらない」と憤った。

 県警の発表によると、男は福岡市中央区、会社員の被告(別の窃盗罪で起訴)。被告は昨年12月、筑後地区2か所の高齢女性宅でネックレス計2本(計35万円相当)を盗んだ疑いが持たれており、容疑を認めているという。

 被告は日中に数人のグループで住宅街に入り、高齢者宅を狙って一斉に戸別訪問していたという。査定の隙に金目のものを盗む手口で被害が確認されているのは、福岡、熊本、大分の3県など広域に及び、このグループのうち、30歳代の男2人が熊本県警で逮捕されたり、指名手配されたりしている。

 福岡県内では2020年以降、同様の手口による被害が16件(約400万円相当)確認されており、県警は余罪についても捜査。これまでにこのグループが買い取ったり盗んだりした品を業者で換金した総額は4億円に及ぶという。