娘と息子で「期待する最終学歴」が異なる親たち 子どもの進路を変えてしまう「バイアスの怖さ」

AI要約

ジェンダーバイアスについての無意識の思い込みに関する現代社会の問題について述べられている。子どもたちへの影響やBBCの実験を通じて示された具体例も挙げられている。

実験や研究を通じて、ジェンダーバイアスがいかに根深い問題であるかを示唆している。男女の違いに基づく行動や期待が、子ども時代から潜在的に刷り込まれていることが明らかになっている。

1975年の論文から2017年の実験まで、ジェンダーバイアスが存続している現実が示されており、今後の教育や子育てにおいて改善が求められている。

娘と息子で「期待する最終学歴」が異なる親たち 子どもの進路を変えてしまう「バイアスの怖さ」

「男子は理系科目、女子は文系科目が得意」など誰の心にもひそむ、ジェンダーに基づく無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)。子どもたちと接する親や教員がこうした思い込みを持っていると、進路に大きな影響を与えてしまいかねない。自らの固定観念に気づき、子どもたちに刷り込まないようにするには、どうすればいいのだろうか。

私は東京大学出身かつ現在教員でもあるからか、たまに子育て中の親から「どんな子ども時代だったのか」や「どんな知育や子育てをしていたか」を聞かれる。でも、知育や子育ての方法よりずっとずっと大事なのは、ジェンダーバイアスを刷り込まないことだと思う。

実は日本だけではなく、まだまだ世界中で、子どもの頃からジェンダーバイアスはさまざまな形で刷り込まれている。BBCが実験をした「Girl toys vs boy toys: The experiment - BBC Stories」という2017年の映像をYouTubeで見ることができる。

動画では、本当は女の子の赤ちゃんが、男の子っぽい服を着せられ、本当は男の子の赤ちゃんが、女の子っぽい服を着せられて、ボランティアの大人に預けられる。シッターを任された大人たちは、車やロボット、人形やぬいぐるみなどさまざまなおもちゃがある部屋で、赤ちゃんたちを見てもらう。

すると、女の子っぽい服を着せられている赤ちゃんに対しては、大人たちは概ねふわふわのぬいぐるみを差し出し、赤ちゃんの反応があろうがなかろうが、人形遊びに誘うのだ。

逆に、男の子っぽい服を着ている赤ちゃんには、男性であれ女性であれ、大人たちは、ロボットのようなおもちゃを差し出したり、抱き上げて車に乗せて体を動かさせたりする。「実はこの子は女の子/男の子なのですが……」と種明かしをすると、大人たちは「自分の中にバイアスがあった」と気づく、という動画だ。

この動画の発想のもとになったのは、心理学の「ベビーX」という実験とみられる。その実験を記した論文では、赤ちゃんが女の子だと言われると男性も女性も大人は人形を差し出す確率が高くなり、赤ちゃんの性別がわからないとされている場合、男性はジェンダー中立的なおもちゃを差し出すが、女性は人形を差し出すという大人側のジェンダー意識の差にも言及している。

残念なのはこの論文が1975年のもので、その当時からバイアスがあることは指摘されているにもかかわらず、2017年の先進国でも同じような現象が見られるということで、問題の根深さをうかがわせる。