官房副長官も秘書官も「葛西のお気に入り官僚」…「一介の企業経営者」に過ぎない葛西が官邸人事にまで影響力を持つ衝撃の理由

AI要約

安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。

本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を紹介する。

2021年10月4日、衆議院と参議院の本会議で指名された岸田文雄が天皇による任命を経て第100代の内閣総理大臣に就任した。新首相による組閣や自民党役員人事が注目を集めた。

わけても自民党幹事長や官房長官の人事が焦点だとされ、安倍晋三の横車が入って大揉めに揉める。安倍派四天王の一人と目される萩生田光一を幹事長に推した安倍に対し、麻生太郎を後ろ盾にした岸田は麻生派の甘利明を起用(甘利の小選挙区落選を受けて茂木敏充に交代)、官房長官には安倍派のなかでも安倍と距離のある松野博一が就いた。

だが、実は岸田政権の発足にあたり、永田町や霞が関の玄人筋のあいだでは、これ以上に注目された官邸人事があった。元警察庁長官栗生俊一の官房副長官と、政務秘書官の嶋田隆の予想外の起用である。

「これは明らかな葛西と杉田官房副長官ラインの人事だろう。二人とも葛西のお気に入り官僚で、内閣人事局長の杉田が指名した……」

官房副長官も秘書官も「葛西のお気に入り官僚」…「一介の企業経営者」に過ぎない葛西が官邸人事にまで影響力を持つ衝撃の理由

 安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。

 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。

 『国商』連載第40回

 『「技術を盗まれるからダメだ」…中国の国家主席の要望をも突っぱねる男・葛西敬之が「リニア」に込めた思い』より続く

 2021年10月4日、衆議院と参議院の本会議で指名された岸田文雄が天皇による任命を経て第100代の内閣総理大臣に就任した。新首相による組閣や自民党役員人事が注目を集めた。9年続いた安倍・菅の長期政権に対し、岸田がいかに独自色を打ち出せるか。そこが岸田にとって最初の試金石だといわれた。わけても自民党幹事長や官房長官の人事が焦点だとされ、安倍晋三の横車が入って大揉めに揉める。安倍派四天王の一人と目される萩生田光一を幹事長に推した安倍に対し、麻生太郎を後ろ盾にした岸田は麻生派の甘利明を起用(甘利の小選挙区落選を受けて茂木敏充に交代)、官房長官には安倍派のなかでも安倍と距離のある松野博一が就いた。自民党最大派閥の安倍派は福田康夫の長男である福田達夫を中心に、岸田に近い議員も少なくなく、松野もその一人と目される。この人事は安倍の圧力をかわし、辛うじて岸田カラーを滲ませたと一部で評価された。

 だが、そうとばかりも言い切れない。実は岸田政権の発足にあたり、永田町や霞が関の玄人筋のあいだでは、これ以上に注目された官邸人事があった。元警察庁長官栗生俊一の官房副長官と、政務秘書官の嶋田隆の予想外の起用である。詳しくは後述するが、こう囁かれた。

 「これは明らかな葛西と杉田官房副長官ラインの人事だろう。二人とも葛西のお気に入り官僚で、内閣人事局長の杉田が指名した……」