岸田首相は「自爆」している…今国会で「自民党への不信感」を高めた「小手先のゴマカシ」の裏側

AI要約

自民党の派閥が違法な裏金問題を巡る改正政治資金規正法が成立した経緯。

維新と自民の合意事項が参議院で破られたことにより、関係性が崩壊し、内閣支持率が低下した要因。

維新と自民の合意事項に関する裏話や議員間の信頼関係に影響を及ぼした出来事など、岸田首相の政権に対する不信感。

岸田首相は「自爆」している…今国会で「自民党への不信感」を高めた「小手先のゴマカシ」の裏側

 自民党の派閥が政治資金パーティーの収入を過少に記載し、違法に自由に使えるお金を生み出していた裏金問題。

 この問題への対応の一環である改正政治資金規正法が、6月19日に参議院で可決、成立した。政治に関するお金について透明化を図り、議員への罰則を強化した内容となる。

 ここで注目したいのは、法案審議を巡って、日本維新の会が衆議院の採決では賛成した一方、参議院の採決では反対に回るという異例の展開が発生したことである。そして、その混乱の背後にいたのは岸田首相の右腕と呼ばれる、あの政治家だった。

 もともと政治資金規正法についてはこんな議論が交わされていた。現行法においては、政治資金パーティーのパーティー券は20万円を超えなければ購入者が公開されず、さらに党から政治家に支給される政策活動費は使途を公開しなくて良いことになっていた。そのことが企業や団体との癒着や、不透明な金の流れの温床になっていると指摘されていたのである。

 そこで自民は、パーティー券は10万円超で購入者公開、政策活動費は項目ごとの使途のみを公開する案を出した。しかし、それではあまりにも基準が甘すぎるという指摘がほかの党から噴出。

 自民は法案に修正を重ね、公明の要望を受け入れる形でパーティー券は5万円超で購入者を公開、維新の要望を受け入れる形で政策活動費は10年後に領収書を公開することとなった。

 このとき、自民の岸田文雄首相と維新の馬場伸幸代表が会談して交わしたのが「政治資金制度改革に向けた合意事項」だ。

 この合意事項の項目の1つが「『旧文通費』について、使途公開と残金返納を義務付ける立法措置を講ずる」というものだった。この約束を果たすことを前提に、維新は衆議院で政治資金規正法改正案の賛成に回ったのだ。

 旧文通費をというのは、各国会議員に月100万円支給される経費のようなものである。その一方で、使途公開の義務がなく、何に使ったのか分からないお金になっていることから、維新がかねてから改革を要求していた。

 維新は今回ようやく自民に改革の言質を取ったかとみられたが、規正法の審議が参議院に移ると、自民が「今国会で立法措置を講じるのは日程的に厳しい」と翻意したのである。

 馬場氏が岸田内閣を「うそつき内閣」と批判するなど、自民と維新の関係性が一気に崩壊し、維新は参議院で規制法に反対に回るに至った。

 永田町関係者によると、この合意事項について水面下で協議を進めていたのは維新の藤田文武幹事長と、自民の木原誠二幹事長代理だったという。

 そして、もともと合意には「今国会中に結論を得る」という趣旨の文言が入っていたが、木原氏が「信用してほしい」と言って期限についての記載を削除、自民に逃げ道を作っていたのだ。

 木原氏と言えば、妻が不審死に関与していたとされる疑惑「木原事件」を巡って、昨年9月に官房副長官から外されたが、その後も幹事長代理や政調会長特別補佐という重要な役職を兼任し、今回のように秘密裏に他党との折衝にあたるなど、岸田首相の右腕として活動を続けていた。

 しかし、今回の自民と維新の合意は、衆議院において維新の賛成を取り付ける効果はあったものの、その後に自民が約束を反故にしたことが印象付けられる形にもなった。

 永田町関係者は「そもそも政治資金規正法の改正で国会の日程が窮屈ななか、自民も最初から今国会のうちに旧文通費についての立法措置を行う気などなかった。維新を賛成に引き込むためのリップサービスとして合意は行われたが、その内容は自民に対する不信感にも繋がってしまっている」と語る。

 時事通信が6月7~10日にかけて実施した世論調査では、内閣支持率が16.4%と過去最低を更新した。

 裏金問題による不信感に加え、その再発防止を巡る法律の改正案を巡っても政府与党が手練手管を弄していることが国民に見破られていることの証左でもあるだろう。

 このまま、岸田政権は右腕と呼ばれる木原氏とともに沈んでいくのか。

 そんな未来を予想してしまうような、終盤国会情勢となっている。

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 さらに【つづき】「「岸田の次」の総理候補に急浮上した「意外な大物議員」の名前…小泉、菅、萩生田も動き始めた」の記事では、「ポスト岸田」の動向についてくわしく報じている。