自民執行部内に溝、首相は維新に「譲歩」決断できず…幹部「麻生氏がさらに怒ると考えたのでは」

AI要約

政治資金規正法改正案の採決で、自民党と日本維新の会の共同歩調が決裂する異例の展開が起こった。

自民党執行部内で他党との交渉姿勢に関する食い違いがあり、首相が維新に対処できなかったことが背景にある。

衆院では維新を抱き込む戦略が取られたが、参院で破綻。首相と自民執行部の不協和音が露呈した。

 政治資金規正法改正案の採決を巡り、自民党は衆院で共同歩調を取った日本維新の会と参院で決裂した。異例の展開となった背景には、自民執行部内に生じた他党との交渉姿勢に関する食い違いを岸田首相(自民総裁)が埋められず、維新に踏み込んだ対応が取れなかったことがある。

 採決に先立つ18日の参院政治改革特別委員会の質疑。維新の音喜多政調会長は、自民、維新両党の党首間合意である調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)改革について、今国会の実現を見送った自民を「裏切り」と厳しく批判した。首相は「改革を進めたい。この思いは全く偽りはない」と釈明したが、維新は採決で反対に回った。

 改正案に維新を抱き込む戦略は、衆院段階では自民執行部の共通認識だった。5月29日夜、首相は麻生副総裁、茂木幹事長と会食し、維新の協力を得る方針を確認。茂木氏は「公明党が採決で反対しても、維新を巻き込めば法案は通せる」と主張し、その場で首相最側近の木原誠二・幹事長代理に電話をかけ、維新との交渉を指示した。

 当時、公明は政治資金パーティー券購入者の公開基準額の大幅引き下げを自民に迫っていた。麻生、茂木両氏は公明への譲歩に反対で、維新の抱き込みには、公明に「決裂も辞さず」との姿勢を見せて揺さぶる狙いがあったとみられる。

 ただ、首相は「連立政権の基盤はゆるがせにできない」として公明に譲歩した。その後、麻生氏は公然と不満を漏らすようになり、首相は後見役との関係悪化という問題を抱えた。

 参院に審議が移ると、維新は旧文通費改革の今国会中の断行を自民に強く要求した。維新以外の主要政党は改革に腰が重く、会期内の決着が困難な中、会期延長に否定的な首相は「(自民と維新の)合意文書には実施時期が書かれていない」として、改革の実現時期を明言しなかった。

 衆院側だけで一定程度議論を進める案も浮上したが、麻生、茂木両氏は事態を静観。代わって維新と調整に当たったのが、森山総務会長と渡海政調会長だった。