大調査 確定申告で政治献金を取り戻す国会議員たち③制度の抜け道を利用し「税金アジャース」(全3回)

AI要約

国会議員が自身の政党支部に寄付し、所得税の還付を受ける問題が浮上している。

自由民主党や立憲民主党の議員が寄付を行い、還付金を受け取っていたことが発覚し、この行為が問題視されている。

議員たちは「法に則って処理した」としているが、公衆がそのやり方を疑問視している。

平井卓也氏や原田義昭氏、岡本充功氏、菊田真紀子氏、浅野哲氏など複数の国会議員がこの問題に関わっており、それぞれの立場や寄付状況が明らかになっている。

政治家のカネに関する取り組みと公職候補者による寄付の是非についての議論が巻き起こっている。

この問題を巡って、政治家自身の意識や国民の期待とのずれが露呈しており、今後の適切な対応が求められている。

政治とカネの問題や倫理観についての議論が政治の重要課題として浮上している。

大調査 確定申告で政治献金を取り戻す国会議員たち③制度の抜け道を利用し「税金アジャース」(全3回)

国会議員が自分の政党支部に寄付して所得税の還付を受ける。こんな姑息なことがまかり通っています。

実はこのやり口、2021年5月にフロントラインプレスが全ての国会議員について調査し、明らかにしています。記事はスローニュースの前のサービスに掲載されたもので、現在は読めなくなっているため、政治とカネの問題が問われている今回、当時の記事の主要部分を再掲載することにしました。(肩書などは全て当時のもの)

政治資金の還付を受けたことを認めた国会議員もいる。

現職の国務大臣で自由民主党の衆院議員、平井卓也氏(香川1区)である。平井氏は、デジタル改革担当、情報通信技術(IT)政策担当、内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度)であり、デジタル政権を推進する菅義偉政権のキーパーソンでもある。

平井氏は2015、17年の寄付計1500万円について、税額控除のための書類を受理していた。控除を申請して還付を受けていれば、計約450万円が戻ってきたことになる。資金管理団体と後援会には寄付していないので、前述のように、制度の“抜け穴”を知っていた可能性もある。

平井氏からはファクスで回答があり、事実上、控除申請したことを認めたうえで、次のように記していた。

「政治団体の政治資金につきましては、法令に従い適正に処理し、その収支を報告しています。個人の資産については、法令に基づき資産公開しており、法令に定める以外のことについては法令の趣旨に照らし回答しておりません。なお、政治資金規正法上、公職の候補者を含め個人から政党支部への寄付は特段禁止されておらず、また、租税特別措置法上、個人から政党支部への寄付は寄付金控除の対象になると承知しています」

自由民主党の衆院議員・原田義昭氏(福岡5区)も上記の平井氏と同様の主張だった。

原田氏は2015年から19年までの5年間、毎年480万円ずつ、計2400万円の寄付について、控除申請の書類を受け取っている。申請した場合に戻ってくる還付金の合計額は約720万円に上る。過去5年間に政党支部以外への寄付はなかった。

同氏も事実上、税額控除を申請したことを認めた上で、ファクスにこう記していた。

「これまで、他の多くの議員と同じように適正に処理してまいりました。これまでは問題はなかったとされています。今後、議論が深まり、何らかの明確な結論が出た場合には、それに従い、適宜適切に処理したいと考えます」

法令に則って適正に処理した――。そうした論理は、自由民主党の専売特許ではない。

立憲民主党の衆院議員・岡本充功氏(愛知9区・比例復活)は2015~2019年の5年分について、毎年連続して控除のための書類を受け取った。寄付の合計は2400万円。控除申請していれば、計約720万円を受け取っていたことになる。この間、資金管理団体と後援会への寄付はなかった。

岡本氏はファクスで次のように回答してきた。

「法に則って処理しております。個別具体的な回答は控えさせていただきます」

実際に控除を申請したと事実上認めた内容である。もちろん、租税特別措置法に基づいて還付金を受け取るのは、違法ではない。「法に則って処理」も当たり前の話だ。フロントラインプレスが尋ねたかったのは、政治家自身がその制度を利用することについての考え方である。

政治とカネに関して政治家に質問すると、「法に則って適正に処理」という回答がいつも出てくる。

立憲民主党の衆院議員・菊田真紀子氏(新潟4区)もそうだった。菊田氏は2015年の513万4421円の寄付について、寄付金控除の書類を選管から受理している。申請すれば、約154万円が還付される計算だ。

ファクスでの回答は「受理した還付金は法令に則り適正に処理を行っております」と記されていた。税額控除を受けたことを認めているのである。その上で、「誤解を受ける恐れがあるので、それ以降の寄付については控除は受けていません」と書かれていた。2016年以降は、政党支部への献金に関して所得税の還付を受けていないという宣言である。では、なぜ、誤解を受ける恐れがあると考えるようになったのか。そもそも、その誤解とは何か。菊田氏は何も示していない。

国民民主党の衆院議員・浅野哲氏(茨城5区・比例復活)は秘書や事務所員ではなく、本人から電話で回答があった。浅野氏は2017年の寄付のうち、1000万円を控除のための書類に記載した。それを選管に提出し、確認をもらっている。確定申告の際、実際に控除を申請していたら約300万円が還付された計算だ。

浅野氏の説明はこうだった。

「当時は当選直後のこともあり、書類を使って控除の申請を行った。当時の認識としては、政党支部への寄付は自分のために使っているのではなく、政党のために地域で活動する人たちのためのもの、と思っていた。多くの先輩議員の方々が寄付をしても控除申請していないことを知り、今後は控えたいと思っている」