Z世代は「消滅可能性自治体」リストをどう受けとめたか

AI要約

「人口戦略会議」が提言した「人口ビジョン2100」や「消滅可能性自治体」リストについて、若い世代の受け取り方が議論されました。若者や女性の視点が反映されないことや、アプローチの問題などについて意見が交わされました。

議論に対して拒否反応が出る若年層や女性に対して、より適切なアプローチが必要であることが指摘され、過去の反省からの学びが重要であるとの意見も出ました。

新たな指標や提言の画期性や現実感は評価されつつも、議論を喚起するだけではなく、現役世代や子育て世代とのコミュニケーションを図ることも重要であるとの議論がなされました。

Z世代は「消滅可能性自治体」リストをどう受けとめたか

――民間有識者でつくる「人口戦略会議」が、今年に入り「人口ビジョン2100」や「消滅可能性自治体」リストを公表し、人口減少社会に対する問題提起を行っています。若い世代がこうした提言等をどう受けとめたかをうかがいたいと思い、皆さんにお集まりいただきました。はじめに自己紹介をお願いします。

大空》25歳、僕の定義では若者ラストイヤーの大空です。24時間チャット相談を受けるNPO法人「あなたのいばしょ」を運営し、自殺や孤独・孤立の対策や政策提言を行っています。

能條》私は二つの団体を運営していて、一般社団法人NO YOUTH NO JAPANでは、SNSでの情報発信とともに被選挙権年齢を18歳に引き下げる活動を、FIFTYS PROJECTでは、若い女性が政治の場にいないことに問題を感じ、地方議会に立候補する20~30代の女性政治家を増やす活動をしています。

古井》僕は株式会社POTETO Mediaで、行政機関の政策発信をデジタル化して広く届けるPRの仕事をしています。ちなみに昨年、父親になりました。今日のメンバーの中で唯一、結婚していて、子育て中の身ですね。

――「人口ビジョン2100」や「消滅可能性自治体」リストをご覧になってどんな感想を持ちましたか。

大空》「あなたのいばしょ」の職員は約8割が女性なのですが、この座談会に先立って、今回の提言について彼女たちに話してみたんです。「20~39歳の若年女性人口の将来動向に着目して……」と説明した途端、「キモーい!」と悲鳴に似た声があちこちから上がりました(笑)。いくら統計的に正しいデータでも、その発信の仕方によって女性への社会的抑圧が生まれることが想像できない人たちが考えた提言に、はたして意味があるのかと思ってしまいました。

 人口戦略会議のメンバーの年齢や性別などの構成は、10年前の人口創成会議からほとんど変わっていませんよね。増田寛也先生が『中央公論』2月号の三村明夫さんとの対談の中でおっしゃった、若者や女性の声を社会全体に反映させることが重要だという意見と矛盾しています。もし本当にそう思うなら、会議のメンバーに若い人を入れるべきでしょう。そうではないのに、「若年女性」や「若者」を主語にして語ることには強烈な違和感を抱きました。

能條》私も今回のような議論には拒否反応が出てしまうんですよね。私の周りも「私たちのことを子宮として見ている」と嘆いていました。変えるべきはアプローチなのに、結果としての数字ばかりに目が向いている。10年前にも批判はあったと思いますが、この時代に同じようなリストを出して、自治体側も「うちは消滅を免れた」と喜んでいる様子に、これじゃあ変わらないだろうな、と思ってしまいました。まずは10年前の反省から始めてほしい、というのが正直なところです。

古井》「消滅可能性自治体」は、つまり若い女性の人口が激しく減っている街ということのはずだけれど、「消滅可能性」のインパクトが強くて、そのことが見過ごされがちな気がします。若い女性が街に残ってくれず、都会に行きたがる本心にこそもっと向き合うべきなのに、そうした議論があまり深められていない印象です。

大空》もちろん「封鎖人口」という新たな指標を取り入れて、地域特性に応じた対策を明らかにしようとしたのは画期的だと思うし、自治体の広域連携の必要性を説く提言などには現実感もあります。それに今僕たちが述べたような反発もあることは織り込み済みで、それでも議論を喚起したいという意図も分かります。

 でも、自分たちの役割は議論を起こすことだと言わんばかりの高みに立ったやり方には違和感を持ちます。これでは現役世代や子育て世代とのミスコミュニケーションが生まれてしまうのではないでしょうか。