日本は42年遅れてる?ジェンダーギャップ指数15年1位の国が「男性育休義務化」を推進する意味

AI要約

2024年のジェンダーギャップ指数で、アイスランドが15年連続1位を獲得し、男女平等政策の取り組みが紹介された。

アイスランドでは男性育休の義務化やクオータ制により、男女の平等が進んでおり、政治分野でも女性議員の割合が高い。

日本はG7諸国の中でもジェンダーギャップ指数が低く、政治における男女平等がまだ達成されていない状況である。

日本は42年遅れてる?ジェンダーギャップ指数15年1位の国が「男性育休義務化」を推進する意味

 2024年もジェンダーギャップ指数が公表された。日本は146ヵ国中125位だった昨年から少し順位を上げ、118位。ただしG7では最下位のままだ。

 では、ジェンダーギャップ指数の上位の国は、どのような環境で上位となっているのだろう。ジャーナリストの浜田敬子さんが、15年連続1位となったアイスランドにて取材。前編では、「平等」を連帯して声をあげるために、男女の賃金格差の解消に力を入れてきた理由とそれによる変化をお伝えした。

後編ではもう一つ政策の重要な要素である「男性育休の義務化」からアイスランドの政策をひもとく。

 アイスランドの男女平等政策の中で重要な一つが、前出の賃金の平等化だが、もう一つが2000年から始まった男性の育児休業取得の義務化だ。

 アイスランドでは男性の育休取得率は現在85%にのぼる。2000年に育児休業法が改正され、男性にも女性と同様5ヵ月の育休が義務化された。男性の育休期間を女性に振り替えることはできないので「取るか」「失う」しかない。現在は男女ともに6ヵ月ずつ取れ、さらにどちらが取得してもいい6週間がある。

 男女ともに育休を取得することで性別役割分業意識の解消につながるほか、女性の出産離職を防ぎ、採用・登用において女性が不利にならないという効果もある。男性も育休を取ることが前提なので、企業はそれを見越した人員配置を考えることにもなる。

 女性権利協会会長のタチアナ・ラティノヴィッチさんはこう話す。

 「男性の育休取得が義務化されたことで、男女問わず育児に対する責任感は増したと思います。それでも、まだ家族の誕生日のプレゼントを買い揃えたりという『名もなき家事』の多くは女性に偏っているし、育休も女性が長く取る傾向が強い。それはやはり男性の方が給与が高い仕事に就いている、という現実があるからなのです」

 折しも6月1日に投開票された大統領選ではこの国で2人目となる女性大統領が当選した。しかも大統領選に立候補した12人中6人が女性。上位3人は全て女性だった。国会議員に占める女性の割合は38%(最も多いときで47%)、レイキャビック市議会では女性は半数を超えている。アイスランドの政治分野でのジェンダー平等は1位で突出している。

 これは2010年に導入されたクオータ制(格差是正のため組織における女性の数を一定数割り当てる制度)の影響が大きい。先の女性権利協会のラティノヴィッチさんは、クオータ制導入によって女性議員が急速に増え、女性政策の優先度が上がったと話していた。

 日本の今回の順位は118位。中でも政治分野の順位は女性閣僚が増えたことで2023年の138位から118位まで上がったとはいえ、やはり最低レベルだ。これはいまだに女性の首相が誕生していないこと、女性閣僚の少なさ(現岸田政権では5人で史上最多だが)、衆院議員における女性議員が1割に止まっていることが要因だ。候補者における男女均等を目指し法も改正されたが、自民党などの反対で義務化はされていない。日本の政治状況を説明すると、レイキャビック市の人権・平等担当者からは、「アイスランドの1982年の状況ね」と言われた。

 よくアイスランドなど男女平等が進んだ北欧諸国の話をすると、日本では「国の規模が違う」と反発される。本当にそうだろうか。アイスランドだって、最初から平等だったわけではない。要は性別によって人は差別されるべきではないという当たり前の人権意識があるかないかだけではないのか。

 私はアイスランドの「平等3点セット」は、

 (1)同一労働同一賃金義務化による男女の賃金格差の解消

(2)男性育児休業の義務化

(3)議会や企業幹部へのクオータ制の導入

 だと感じた。この3つは日本も掲げている。違いは義務化しているかどうかだ。完全な平等に向けて法制度を見直し、目標を数値化し履行をモニタリングする、このプロセスを徹底しているかどうかの違いなのだと感じた。