「地域で安全を守る責務」が保護司を続ける理由…家族の理解得られず、なり手不足は深刻化の恐れ

AI要約

保護司としての活動を通じて、更生に対する手助けや安全確保への貢献がやりがいとされる人が存在する。

具体的な保護司の活動や役割、犯罪再発率の低下に与える影響などが述べられている。

保護司のなり手不足の現状や、地域社会での保護司の重要性が強調されている。

 安全への不安も指摘される中で、なぜ保護司を続けるのか。更生への手助けをやりがいと捉えて、活動する人は少なくない。

 広島市に約300人もの更生に携わった女性がいる。中本忠子(ちかこ)さん(90)で、2010年まで30年間保護司を務めた。「怖いという気持ちではできん。相手を信じないと自分も信じてもらえない」と語る。

 面接場所は自宅の市営住宅の一室だった。シンナーを吸っていた少年、薬物を乱用していた暴力団関係者……。招き入れてはご飯を食べさせ、満腹にしてから身の上話に耳を傾けた。

 中本さんは「今も以前に担当した人からしょっちゅう電話をもらう。結婚、就職、人生の節目の報告を聞くのが生きがい」と話す。

 大阪府内で保護司を務める60歳代の自営業男性は対象者に「損得、考えや。また犯罪したら損やで」と柔らかい口調で諭し、再犯に手を染めないよう指導する。保護司を続ける理由について、「地域で安全を守るための責務だと思っている」と言う。

 大津市で殺害された保護司の新庄博志さん(60)も医療機関や学校などと連携し、社会全体での立ち直りを考えていた。保護観察中に新庄さんから支援を受けた男性(27)は「親身に接してくれて父親のようだった」と振り返り、「頑張る姿を見てほしかった」と語った。

 保護司が更生に果たす役割は大きい。犯罪白書によると、刑務所を出所後、2年以内に再び罪を犯して入所する「再入率」(2021年)は、保護司らが支える仮出所者が9・3%だが、保護司の支援対象とならない満期出所者は21・6%に上る。

 国の保護観察官として保護司と連携した経験がある浜井浩一・龍谷大教授(犯罪学)は「保護司は『あなたの味方だ』という立場で、罪を犯した人を地域で密着して受け入れる。家庭の温かみを感じてもらいつつ、生活を安定させて立ち直りまで支える存在は他にない」と強調する。

 保護司のなり手は減少傾向にある。全国の保護司は今年1月時点で4万6584人で定数5万2500人に約6000人足りない。