戦国武将、藤堂高虎を主人公にした時代小説を自費出版 「忠義の士」として描く

AI要約

戦国武将藤堂高虎を主人公とした時代小説「真説 蔦は枯れず」が自費出版された。著者は歴史愛好家の平井直さんで、高虎の忠義を描いた作品として注目を集めている。

平井さんは高虎の複雑な人間性を掘り下げ、忠義というテーマに焦点を当てながら、新たな視点で高虎の姿を描いている。

本書は初版本から追加されたエピソードや大胆な脚色を含んでおり、高虎の人間臭さや女性との関わりを探る内容となっている。

 初代津藩主で築城の名手として知られる戦国武将、藤堂高虎を主人公とした時代小説「真説 蔦は枯れず」が自費出版された。著者は歴史愛好家、平井直さん(70)で、在住する兵庫県の旧国名・摂津国にちなみ、摂津守のペンネームで執筆。一昨年発表した初版本に新たなエピソードを盛り込み、主君を何度も替えたことで有名な高虎を「忠義の士」として描いた作品となっている。(佐々木主税)

 小学生の時から戦国武将や城が好きだった平井さんは、勤めていた銀行を退職後、63歳で小説を書き始めた。高虎は豊臣秀吉の弟・秀長や秀吉、徳川家康ら様々な主君を渡り歩いたため、「戦国の風見鶏」や「ゴマすり」ともいわれる。そんな世間での評価に疑問を持ち、「本当の姿を書いて世に知らしめたい」との思いで、高虎を題材に選んだ。平井さんは深く調べるほどに、高虎が信念に基づいて「真の主君」を選び、選んだ主君には徹頭徹尾尽くす人物であったと考えるようになったという。小説では史実に沿いながらも「忠義」に着目し、自分なりの人物像を描いたと話す。

 初版本を発表して以降、取材先や読者から「高虎をドラマに」との声を多く聞いた。大学時代に演劇部で演出を務めていたこともあり、昨年には初版本「蔦は枯れず」の脚本化に取り掛かった。その際、平井さんが「師匠」と称し、高虎に関する著書も書いている伊賀中世城館調査会の福井健二顧問から、「登場人物に女性が少ないから、これまでドラマ化しにくかったのではないか」と助言を受けた。

 これを受け、詳細が伝わっていない高虎の子を産んだとされる女性を、「幸乃」と名付けて登場させた。高虎が対応に頭を悩ませ、最終的には幸乃の息子が津藩の重臣となるなど、史実にはない大胆な脚色を加えた。女性たちと高虎の交流を描くことで、「女性には弱い」という新たな一面を表現したという。脚本化を進めるうちに小説にも手を加えたくなり、今回の改訂版出版に至った。

 平井さんは「今回は高虎の人間くさい部分も多く盛り込んだ。彼の評価が変わるきっかけになればいい」と話した。

 書籍はA5判367ページで2500円(税込み)。三重大学出版会のホームページから購入できる。問い合わせは059・227・5715へ。