土石流で28人犠牲の街に神輿復活 帰還住民は1割強 大半は戻らず「祭りの時だけでも来て」【静岡発】

AI要約

熱海市の伊豆山地区で5年ぶりに神輿が復活し、祭りが開催された。

土石流災害により28人が犠牲になり、地区の復興・復旧を祈願する例大祭が行われた。

21世帯45人が戻り、76世帯113人が移転や仮設住宅で生活している。神輿が地元の復興・復旧に向けた活力を与えている。

土石流で28人犠牲の街に神輿復活 帰還住民は1割強 大半は戻らず「祭りの時だけでも来て」【静岡発】

土石流に襲われ28人が犠牲になった静岡県熱海市の伊豆山地区で神輿が5年ぶりに復活した。避難した132世帯のうち元の場所に戻ったのは1割強で、大半が移転したり、今も避難生活を送っている。地区に残った住民たちは「神社の祭りを懐かしんで来てくれれば」と期待を込めた。

2024年4月。神輿の掛け声に包まれ、熱海市の伊豆山神社の例大祭が行われた。3つの町内会の神輿がそろって参道を下るのは、新型コロナや土石流災害の影響で実に5年ぶりだ。

伊豆山地区では3年前の2021年7月、大規模な土石流災害によって28人が死亡、住宅など136棟が被害を受けた。

毎年恒例の伊豆山神社の例大祭は、地域の人たちが復興・復旧を願う祭りとなっている。

2023年9月。警戒区域の解除に伴い819日ぶりに自宅に戻った小松昭一さんにとっても、例大祭は忘れられない地域の思い出だ。

小松さんは「(私たちにとって)お祭りと言うと伊豆山神社の祭りだから、私たちも若い時からお祭りに参加して、笛を吹いて神輿と一緒に歩いた記憶がありますから懐かしいですね」と話す。

伊豆山地区では、土石流で避難した132世帯227人のうち21世帯45人が自宅や警戒区域内への帰還を果たし、新たな生活を始めている(2024年5月時点)。

伊豆山地区から離れて生活再建にこぎつけたのが76世帯113人で、残りの35世帯69人は今もアパートなどの”みなし仮設住宅”で避難生活を続けている。

小澤昭治さんは伊豆山地区に戻った21世帯45人のうちの1人だ。例大祭では、長年にわたり神様に奉納する子供たちの舞、神女舞(しんにょまい)の指導を続けてきた。

伊豆山神社は伊豆に配流となった源頼朝が源氏の再興を祈願したと伝わっている。

例大祭では実朝の舞や神女舞が奉納され、神輿と並ぶ見どころの1つだ。軽快なお囃子に乗せて舞う子供たちを見て、指導する小澤さんも「安心しました」と満足気だ。

そして、5年ぶりに伊豆山地区の3つの町内の神輿が境内から下ろされる、「お下り」が行われた。土石流によって衣装や道具の一部が流され、以前より規模は小さくなったが、元の形を取り戻すことで地元の人たちは復興・復旧に向けた活力を感じていた。

3町内会のひとつ、伊豆山浜町内会の高橋一美 会長も「これを機に楽しい事が1つ1つ増えていく伊豆山にしていきたいですね。(3つ町内会の神輿が並ぶと)かっこいいですね。皆さんの笑顔がひしひしと伝わってくるので楽しみです」と笑顔を見せる。