GDPでドイツに抜かれ、インドが抜くかもしれないといわれるが、気にする必要はない

AI要約

ウォーレン・バフェットの金言である「メディアが賢ければ賢いほど、投資家は繁栄する」について、メディアの役割や報道に対するバフェットの皮肉を解説している。

バフェットの「新聞の最も重要な情報は、三行広告の中にある」という言葉を例に挙げ、広告と報道の違いについて考察している。

さらに、最近のメディアが報じた中国の経済成長に対して懐疑的な見解を述べ、数字の裏に隠された事実に対する考え方の重要性を強調している。

GDPでドイツに抜かれ、インドが抜くかもしれないといわれるが、気にする必要はない

 投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットの金言は数多くあるが、「メディアが賢ければ賢いほど、投資家は繁栄する」もその一つだ。

 皮肉やブラック・ジョークが好きなバフェットの言葉だから、この言葉は「読み替える」必要がある。つまり「メディアが賢くないから、投資家が繁栄しない」ということだ。

 もちろんバフェットは、かつては永久保有銘柄とされたワシントン・ポストを始めとする多数の「メディア」に投資してきた。実際、初期のバフェットの成功には、ワシントン・ポストだけでは無く多くの新聞社の成長が貢献している。

 また、ロイター 2014年8月15日「米バークシャーがチャーター株保有、ディレクTV株減らす=報告」を始めとする映像メディアにも積極的に投資してきた。

 だが、そのメディア業界に精通しているバフェットが、メディアの「報道」に対しては辛口だ。例えば「新聞の最も重要な情報は、三行広告の中にある」と述べている。

 三行広告は、求人や売りたい商品の告知などを企業自身が費用をかけて出稿するから、切実なビジネス(経済)ニーズの反映だというのだ。

 記者が取材した記事や「社説」などよりも「広告」の方が情報としての価値があるというのは、バフェットらしい皮肉である。

 事実、日本経済新聞 2020年12月10日「中国GDP、28年にも米超え 日経センター予測」を始めとするメディアの「チャイナ・アズ・ナンバーワン」騒ぎを振り返れば、バフェットの「メディアが賢ければ賢いほど投資家が繁栄する」という言葉の真の意味がよくわかる。

 現在、昨年8月31日「中国は崩壊か? それとも『失われる50年』か? いずれにせよ日本のバブル崩壊以上の惨劇が待っている」との状況に陥っているのは明らかだ。

 念のため、少なくとも2008年発刊の拙著「韓国企業はなぜ中国から夜逃げするのか」以降、2019年1月9日「客家・鄧小平の遺産を失った中国共産党の『哀しき運命』を読む」など多数の記事で述べたように「中国の目覚ましい経済成長」に対して、私自身は非常に懐疑的であった。

 そのようなメディアが、日本経済新聞 2月25日「名目GDP、ドイツに抜かれ4位 23年4兆2106億ドル」、同4月21日「インドのGDP、来年日本を抜く IMF推計 4位浮上、円安で早まる」のように騒ぎ立てている。

 もちろん、統計上の数字に基づいた話だが、「中国がGDPで米国を抜く」という話も、経済成長率などの「数字に基づいたもの」であった。意図的なものであるかどうかはともかく、「数字は嘘をつかないが、噓つきは数字を使う」の典型例に思える。

 統計は言ってみれば、「数字の羅列」である。人間は「数字」をそのまま信じやすいが、大事なのは「数字」の「背景」である。バフェットが主張するように、メディアは数字の背景を理解できるよう「賢く」なるべきであろう。

 だが結局のところ、メディアには多くを期待できないから、バフェットのように「自分自身で数字の背景を考える」ことが極めて重要だ。