「3分でマイクオフ」環境相と水俣病患者・被害者団体の懇談 持ち時間守るより大切なこと

AI要約

環境省の懇談会でのマイク切断事件が批判を浴びる。

環境省の審議会での発言制限についても言及。

時間設定よりも議論の質が重要だとの論評。

「3分でマイクオフ」環境相と水俣病患者・被害者団体の懇談 持ち時間守るより大切なこと

 「3分」と聞いて何を思い浮かべるか。

 地球を守るために戦ったウルトラマン、10円玉を握り締めた公衆電話、テレビの昼前の料理番組、日本から世界に広がったカップ麺-。人それぞれあるだろう。これに新たに加わったのが環境省の懇談会である。

 今月1日に熊本県水俣市であった伊藤信太郎環境相と水俣病の患者・被害者団体の懇談で、環境省側は、1団体の発言時間を3分程度と設定。時間が来ると一方的にマイクの音量を絞り発言を遮断した。

 この時の映像を見ると切なくなる。

 昨年春に痛みに苦しみながら亡くなった妻の無念さを訴えている途中に、マイクを切られた水俣病患者連合副会長の松崎重光さんは、顔を上げ悲しげな表情を見せただけ。チッソや国の怠慢による苦しみを大臣に伝えたい一心だったのだろう。

 「皆さまのお話を伺える重要な機会と考えている」。懇談の冒頭に、こうあいさつした伊藤氏はマイクが切られても素知らぬ顔。去り際に参加者から詰め寄られると「マイクを切ったこと、ちょっと認識していません」と言い放った。水俣まで何をしに行ったのか。

 1週間後、伊藤氏は「水俣病は環境省が生まれた原点です…ですので、環境省の大臣がこのことをいかに大切に思っているかということをお伝えしたい」と涙を浮かべ謝罪した。

 こんなマイクパフォーマンスができるのなら、懇談の場で見せてほしかった。

 水俣での懇談で環境省は、1団体の持ち時間を3分とする運用を2017年から続けていたという。

 霞が関では、審議会などで「できるだけ多くの方にご発言いただく」ために発言時間を設定するのが一般的だ。マイクを切るような運用はないが、時間が迫るとベルを鳴らしたり、発言をまとめるよう促したりするのは日常茶飯事である。

 エネルギー基本計画の見直しを議論する総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会の発言時間は1人4分程度だった。事務方の説明に続き、手慣れた委員がポイントを絞って発言し、議事が進む。その積み重ねで政策の方向性が定まっていく。

 事務方にとって、1人3分、4分という時間設定は意見を聞いたというアリバイをつくる目的もあるのだろう。水俣での懇談ではっきりした。

 ある会合で参考人に呼ばれた大学名誉教授が「1人2分しか発言できなければ、まともな議論はできない」と漏らしたのを聞きはっとした。議論が足りず針路を誤っては元も子もない。時間を守るより大切なことがたくさんある。 (論説委員)