残業月100時間超でも手当は月給の4%…公立教員「定額働かせ放題」問題、支給額引き上げでブラック職場は改善する?

AI要約

教員不足の深刻さと背景について文部科学省の調査結果を交えて解説。

教員の待遇改善に関する報道で問題が浮上し、定額働かせ放題制度が焦点となる。

教員の給与体系や待遇問題が取りざたされ、改善が求められる状況である。

 深刻な教員不足が続いています。文部科学省による2021年5月時点の全国調査では、小中合わせて1350校で教員の定員割れが起きていました。各地の自治体はあの手この手の採用活動を続けていますが、「ブラック職場」との見方が広がってきたためか、抜本解決への道筋は見えていません。教員不足の背景にはどんな事情があるのでしょうか。やさしく解説します。

 (フロントラインプレス)

■ 「定額働かせ放題」NHK報道で騒ぎ

 この5月中旬、教員の待遇改善をめぐるニュース報道で、ちょっとした騒ぎが起きました。

 公立学校の教員には残業代を支払わない代わりに月給の4%を一律支給することになっていますが、教員の待遇改善問題をNHKが報じた際、この仕組みについて「定額働かせ放題、どれだけ残業しても一定の上乗せ分しか支払われない教員の給与の枠組みはこのように呼ばれています」と放送したのです(5月13日)。

 これに文部科学省が激怒。「(放送は)現行の仕組みや経緯、背景、中央教育審議会における議論の内容に触れることのない一面的なもので、大変遺憾」とする局長名の文書を公表する事態となりました。

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 報道への圧力ではないかとの指摘も湧き上がりましたが、それ以上に教員の給与体系や待遇問題に注目が集まりました。焦点は“定額働かせ放題”です。

 公立学校教員の残業代が支払われないことは、教職員給与特別措置法(給特法)という法律で定められています。代わりに支給されるのが、月給4%分の「教職調整額」です。

■ 一律月給の4%→10%以上でも「学校がもたない」

 給特法が制定された1971年当時、1カ月の残業時間は8時間と見なすことが適正であるとの考えから、実際の残業時間に関わりなく、8時間の残業代に相当する額を支給する仕組みができたのです。

 教員は放課後になっても翌日以降の授業の準備や採点、部活動の指導、各種報告書の作成、家庭との連絡調整などに追われ、多忙を極めます。児童・生徒を放りだして退勤するわけにもいきません。

 そうした実態を受け、文科省に置かれている中央教育審議会(中教審)は、半世紀以上も前に決まった4%という水準を引き上げ、少なくとも10%以上にすべきだとの考え方をこの5月に打ち出しました。

 ただ、教員側からは歓迎の声が上がる一方で、「残業時間に応じた手当が出るわけではない」「現場の忙しさに見合わない待遇」といった声も続出しました。

 とくに「このままでは学校がもたない」と訴えてきた全日本教職員組合(全教)は中教審を厳しく批判。「長時間労働の解消のためには業務に見合った教職員の増員と業務量の削減が必要」とする声明を発表し、潤沢な予算を付けて教員を増やすよう要望したのです。

 では、教員不足はどのような水準にあるのでしょうか。