魔法が解けた自社株買い、株価の押し上げ力低下-ROE影響を見極め

AI要約

日本株市場で企業の自社株買い発表が株価を押し上げる力が弱まっている。投資家が業績動向などを含め銘柄選択を強め、株主資本利益率の改善状況を厳格に見極めるようになっている。

自社株買いの株価インパクトが低下しており、投資家は短期的な施策以上の内容を求めるようになっている。企業の年次株主総会は長期的な企業価値向上に関する経営陣の考えを確認する機会として注目されている。

東京証券取引所の要請により、資本効率と株価を意識した経営が求められ、自社株買いや増配の企業数が増加。しかし、新たな株価を押し上げるカタリストを待つ投資家も多く、相場全体の停滞感が強い。

魔法が解けた自社株買い、株価の押し上げ力低下-ROE影響を見極め

(ブルームバーグ): 日本株市場で企業の自社株買い発表が株価を押し上げる力が弱まっている。相場全体が依然として史上最高値に近い水準で推移する中、投資家が業績動向などを含め銘柄選別を強めているほか、自社株買いが株主資本利益率(ROE)の上昇に結びついたかどうかなど資本効率の改善状況を厳格に見極め始めたことが背景にある。

ブルームバーグのデータによると、直近の決算と自社株買いを同時発表した企業の株価は直後の5営業日で東証株価指数(TOPIX)を1%ポイント弱アウトパフォームした。過去4年間は平均で2ポイント以上アウトパフォームしていただけに、自社株買いの効果が低下していることを示す。この傾向は企業の業績計画が市場予想を上回った場合も、下回った場合も同様だ。

自社株買い発表の株価インパクトの低下は、投資家が株価上昇の条件として短期的な施策以上の内容を求めていることの裏返しでもある。6月に集中する各社の年次株主総会は、投資家が長期的な企業価値の向上に関する経営陣の現時点での考えや決意を確認する機会となりそうだ。

野村証券の伊藤高志シニア・ストラテジストは、これまでは増配や期初時点の自社株買いは評価されていたものの、「投資家の目線はものすごく高くなっている」と指摘。「株主還元の考えを示した上で、増配や自社株買いについて語ることが求められている」と話す。

東京証券取引所が昨春以降、株価純資産倍率(PBR)1倍割れの企業を念頭に資本効率と株価を意識した経営を強く求め始めたことで、今年の自社株買いの発表総額や増配企業の数は記録的な多さとなっている。

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積極的な株主還元姿勢は日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新する一助となったが、足元は利益確定の動きが出やすくなっている上、株価を押し上げる新たなカタリストを待つ投資家も多く、相場全体の停滞感は強い。